ごまちゃん、ケニヤを行く!さよなら、ケニヤ〜1
11月12日。ケニヤを出発する日の朝、外はきれいに晴れ上がっていた。昨日見たインド洋も、永遠にこのまま変わらぬ姿を約束するように、その朝も何一つ違いなく、美しかった。
私はとにかく、日本へ旅立つのが今日だと考えるだけで、それだけで嬉しかった。昨日の夜から「今日の夜を超せば、明日は私は機上の人」。まだまだ2日間に渡る長い旅になるけれども、日本に向かうというそのことだけで私には十分だった。その日は朝からにやけていたに違いない。とにもかくにも、私は朝から上々機嫌だった。
人間機嫌がいいと、自然と顔も笑ってしまうようだ。レストランのボーイたちまで、何となくいつもよりにこやかに対応してくれているような気がする。これが最後の朝食よね、これもさいごのフルーツ、さいごの卵料理、さいごのベイクトトマト、最後のコーヒー…どれもこれも「これが最後」といちいち考えるだけでハッピーになれた。考えれば相当変な精神状態である。ミルクティーのクリームがあいかわらず固まってどろどろしていたって、バターが毎度のことながら溶けてどろどろのままサーブされたって、あんまり気にならなかった。2週間前の私なら、このミルクの品質に一人ぶつぶつ文句を言うところだけれど。
↑モンバサで撮影した写真を載せる予定。
染めの洋服を着ている写真です。
その日、私はいくつかの商品を手に入れるために、今回モンバサで私たちの面倒を見てくれたTOTOTOの傘下にある、いくつかのワークショップに行ってから、モンバサの空港に向かうことになっていた。今回一緒に列車の旅を共にし、いろいろな場所を回ってくれたアンダとイネスとは、ここでお別れになる。二人はまだモンバサで行くところがあるらしい。とりあえずTOTOTOのオフィスまでは一緒に行くということになり、迎えにきてくれた運転手の車に乗り込んだ。インド洋もホテルを出ればしばらく、いやひょっとして永遠に見ることもないかもしれない。ホテルのエントランスゲートから見える、榔子の木とジャカランタの花に飾られるように配置されたインド洋を最後に振り返ってみた。少しだけ寂しい、というよりもうちょっとここにいたいな、という感情も湧いたが、すぐに飛行機に乗れることの喜びに、その感情はかき消された。
相変わらずモンバサ、ケニヤの道路事情は悪く、道だか道でないのだかそんなことおかまいなしで皆車を走らせている。田舎は特にひどい。ここ一帯のビーチも、ヨーロッパからの客が多い高級リゾート地であるけれど、モンバサ市街からは離れているため、一歩外を出れば普通の田舎だ。小さなバンに、明らかに定員オーバーで詰め込まれて相乗りする車を見るのももう、これが最後ね、と一々「あれもこれも最後」を考えるとその度に嬉しくなった。
まず、町中のTOTOTOまで行き、ここでアンダとイネスとお別れをすることになった。アンダは一度私の母親に間違えられるという飛んでもない不名誉なこともあったが、なにも判らない私にいろいろと教えてくれた。イネスは私にとって体格のよい、怖いお姉さんという感じであったが、最後は今後の再会を祈って握手した。外国人と一緒に旅行するなど初めての経験だったから、彼女たちにはきっと迷惑をかけただろう。心から感謝したいと思った。無事にここまでこれたのも、彼女達のおかげに他ならないからである。