ごまちゃん、ケニヤを行く!

さよなら、ケニヤ〜4


 ブォーン、というまさにこの形容詞に相応しい音を立てて、50人乗りの飛行機は動き出した。なにしろプロペラ機、このプロペラの回転で飛んでいるわけだから、と考えるとちょっと怖い。きっと蜂に耳があったら、こういう音を聞きながら飛んでるんだろうねえ、などと考えていると、ジャンボよりはるかに体感速度を強く感じながらプロペラ機は離陸。小さい機体だから小回りもコンパクトだ。旋回も、体で直に感じる気がする。 空は快晴、青いモンバサ。当分ここに来ることはないだろう。さようなら、その雲一つ無い晴れ上がった空は、これ以上ないくらい晴れ晴れとした気持ちの私の心境そのもののような気がした。

となりに太めのおっさんが座っているので、早速後部座席に移らせて貰った。それにしてもどうして飛行機というのは皆日本人サイズに作ってあるのだろう。アメリカやアフリカのエアライン社はもっとエコノミーシートも幅広に作った方が自国民のためになると思うのだが、これだけは謎である。

1時間と15分の旅、簡単なサンドイッチとオレンジジュースがサーブされた。50人もいない飛行機なので、かどうか知らないが男性スタッフしかいない。男性スタッフしか載っていない飛行機というのも初めてだった。 そのうち、キリマンジャロが左手に見えまーすというアナウンスが入った。キリマンジャロは、ケニヤとタンザニアの国境にそびえ立つアフリカ一の山であるし、コーヒーの豆の名前としても有名である。ケニヤに来た日本人としては一つ見ておかねばならんな、と目をこらすが、「あいにく曇りで見えにくいようです」とアナウンスが追い打ちをかけるように流れた。雲の向こうにうっすらてっぺんだけ見えるの、あれかな、と思いこんで、満足することにした。キリマンジャロを見た24歳の日本人女性というのもきっとめずらしいだろうな、と変なことを考えてしまった。 飛行機の眼下は当然赤茶の土がずーっと続いている。ときどき根強く大地から生えているサバンナ特有の樹が見える。動物や移動する物体は見えない。何もない。道もない。行きは電車で来たから地上からの眺めだったが、こうやって上から眺めるのも壮観である。これでキリマンジャロが見えれば最高だったのだが、そうはうまくいかないようだ。

いよいよもうすぐナイロビ空港。このままいけばちゃんと到着しそうだし、そしたら次はロンドンだ!


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