既に陽が落ちたナイロビ駅を定刻に列車は出発。しばらくすると乱暴にふとんや枕や毛布を各コンパートメントに投げ入れる乗務員がやってきた。ベッドメイキングのやり方がわからなくて困っていると、どけどけ、やってやる、という感じで慣れた手つきでベッドを完成させてくれる。シーツは一応きちんとノリがかかっており、信用出来そうである。とりあえず、眠る用意は出来たので、安心。
さて、ナイロビ駅を出るとすぐにサバンナの一帯に入る。陽は落ちて、線路沿いの家に明かりが灯っているのが見える。ケニヤの一般家庭をそういえば見たことがなかったな、と考えていると食事の時間を知らせる乗務員ががらがらと鐘をならしながらやってきた。列車はひどく揺れるので、せっかくの食事も気分が悪くなってしまった。なぜか食堂車の電気が気持ち悪いくらいについたり消えたりしている。「今日は食堂車の電気がおかしくてねぇ。いつもはこんなんじゃないんだけど」と乗務員が弁明するが、どうもうそくさい。
私たちは3人グループだったが、食堂車は4人がけの席。あと一人、乗務員が相席を求めてきた。OKすると、来た乗客はアジア人だった。一見日本人のようにも見えるが、中国か韓国じゃないか、という顔立ち。英語で聞いても、何を聞いても全く答えない。いろいろ私の連れが質問しても、手を挙げて「わかりません」というジェスチャー。最後はあきらめて、勝手に食事をとっていたが、どうもその様子が暗くて、一人で電車にのっているという辺りがあやしい。彼が去った後に私の連れが一言。「KGBかCIAじゃないの?」
外を見ていると、サバンナがうっすら見える。なーんにも無い平地である。明かりなんてもちろん無い。きっとお天気ならばもっと星がきれいだったろうに、残念なことに曇り空につき、星は殆どみえない。明日の朝に備えて、歯を磨いて寝ることにした。
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