[片岡研究会とは?]

 


片岡研究会1と片岡研究会2では、都道府県や市町村といった地方政府を中心に研究しています.特に、地方発の革新的(イノヴェーティヴ)な政策にはどのようなものがあり、それらを普及させるにはどのようにすればよいのか、「文献の検討」「実証的な調査と分析」のふたつをもとに解明していきます.

 

片岡先生からのメッセージ

 1.はじめに 〜 なぜ、地方政府なのか?〜

 皆さんが、都道府県や市町村のような「地方政府(地方自治体)」という言葉によって思い浮かべるものは何ですか?

 「ゴミを集めてくれるところ」「国の補助金に群がり、国の言うことをそのままハイハイ聞くだけの操り人形」「大したことができない、イメージの乏しい所」「市民の意見などほとんど聞いてくれない、やる気のない職員の巣窟」「汚職」「魅力がない」「どこでも同じ」...

 そんなものでしょうか? でも、本当は違います。

 よく考えてください。たとえば、今話題の、原発立地のような地域の未来を決める住民投票制度だって、ようやく今年、国レベルで実現した情報公開制度だって、これらの政策をいちばん始めに実現に移したのは、国ではなく、地方政府の力でした。
 そして、今の人たちが「当然だ」と思っている電気製品の品質保証やゴミのリサイクル、自然保護のナショナルトラスト運動、そして売春防止法だって、すべて政策をいち早く実施に移したのは地方政府でした。

 今の日本の公共政策の改善と革新の中で地方政府が果たす役割は、皆さんの想像以上に、はるかに大きいのです。ここに、皆さんの当初のイメージとは全く違う、<政策イノベーター>としての、地方政府の別の姿が見えてきます。

 2.この研究会の目的

 本年の地方分権法の成立によって、都道府県や市町村のような地方政府が、国と対等の立場に位置づけられました。この研究会の目標は、地方政府が国全体の政策を揺り動かし、新しい日本の姿を創造してゆけるような、新しい政策を作ってゆくプロセスの構造を解明し、地方政府がこういった政策上の革新を、今以上にどんどんと盛んに行ってゆけるような政治・行政システムを設計するためには、今の日本の政治・行政・社会システムのどのような点が改善されるべきなのかを、重要な事例に沿って、探ってゆくことです。

 そして、地方政府がこのような政策をイノベーションするに当り、どのような制度的・人的・情報ネットワーク的な問題点があるのか、県や市町村が政策的なイノベーションをより盛んにするためには、どのようなサポートが必要なのかなどを考えるというのが、現在のテーマです。

 SFCの学生は「未来からの留学生」です。

 つまり、皆さんは日本や世界の未来を背負ってゆく人材です。

 だからまず、そういった人たちが新しいアイディアを持って、それを実行に移そうとした際に、都道府県や市町村といった、普通の人から見れば「国の出張所」みたいな所が、とてもイノベーティブなパワーを持っているということを、もっと皆さんにに知ってほしいのです。

 市民参加やNPOといった活動を通じて、市民が政策に関われる場がだんだん増えてきている現在、地方政府にも国や世界を動かしてゆけるパワーがある、ということをしっかりと認識したうえで、ここの研究会で政策革新のプロセスについて勉強していくわけだから、もし、自分達が何か、自分で実現させたい何かの価値を社会的に実現させようとしたら、この研究会で身につけた知識は、その際に十分に役立つものになると思います。また、市町村役所や県庁に勤めるようになった人たちには、そのイノベーティブなパワーを、組織内でおおいに発揮してもらいたいと願っています。

 3.この研究会の構成

 この研究会は、 文献検討とフィールドワークの繰り返しで、らせん階段状に皆さんの知識を伸ばしながら、皆さんの<地方を見る目>を成長させていくように設計されています。

 研究会1(1)は、このテーマに初めて触れようとする諸君のための初心者向け研究会です。地方自治の事前知識は何も前提としません。 ここでは、まず、都道府県や市町村では、どのような仕事をしているのか。その個々の政策領域にはどの様な課題があるのか。都道府県や市町村の中では、政策はどのようにつくられているのか。そして、政策の重要な革新を行う人々は、組織の中でどういう活動を繰り広げているのか、といった地方自治の基本的なしくみや、地方政府内の政策プロセスの基礎知識について学びます。 続いて、自分が関心を持っている政策領域において、地方政府による政策イノベーションや、よい政策の全国への普及の例を取り上げ、まず自分なりにリサーチをしてみます。これは、自分がこの先、継続者用研究会である、研究会1(2)で取り上げたくなるよう な政策分野の見つけるためです。

 研究会1(2)は継続者向けの研究会です。初心者向け研究会で、 地方政府に対する最低限の知識とリサーチ経験がついたことを前提として、ここではじめて専門的な文献が出てきます。都道府県や市町村といった地方政府の政策決定における、詳細でとても質の良い研究の本を5、6冊読みます。初心者向けの研究会で、基礎知識を身につけて、最低限の実態を自分のリサーチで見ているから、専門書の内容は非常に良く理解できるわけです。それで自分が物を見る目をパワーアップして、もう一回自分 のリサーチをする。もっとやりたい人には、もう少しレベルの高い、海外にも通用するような文献も読んでもらいます。そして、もっと広い視野から自分のテーマをリサーチするのです。

 これを何度か繰り返せば、いい卒業製作にたどり着けます。

 4.各研究会の運営

 各々の研究会は前半と後半に分かれています。前半は毎回論文を読んでもらい、研究会当日の昼までにその文献についての意見を書いて、メールで私宛に送ってもらいます。私はそのメールをまとめて論点を決め、2コマ分の時間を使って、皆でディスカッションしながら、全員の物の見方が深まるようにします。

 そして後半は、私が「お助け役」に回り、皆さんに自分で自由に決めたテーマについてのフィールドリサー チをやってもらいます。そしてだいたい毎週、その成果を発表し合い、それに対して私はさまざまなアドバイスをします。そして、最後にすべてを期末レポートとして締めくくるのです。

 このサイクルは二つの研究会ともに同じです。

 5.最後に

 この研究会に入ってくる人のうちの大多数は、地方政府が新しい政策を創造してゆく主体として、大きな活躍をしている、などという、常識離れしたアイディアに半信半疑です。しかし、文献を読み、リサーチをしてゆくうちに、それがだんだんと変ってゆき、最後には、「地方政府は本当に政策の革新をやれる主体のひとつなんだ!」という確信に変化します。

 興味があったら、「だまされた」と思って、研究会をのぞいてみてください。

 

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