役に立つ「政治思想」の基礎
(Learning the Base of Political Philosophy)
1.主題と目標
現代の政治を学んだり、報道に接するとき、「民主化」とか「自由主義」などと言った言葉が使われる。しかし多くの場合、それらの言葉はほとんど自明の前提のように流れて行くだけで、「そもそも民主主義とはいったいどういう意味か?」などということは深く問われることはない。
このことはしばしば、現実性時の混乱となって反映する。すなわち、ある人が思う「民主主義」と、他の人が抱いている「民主主義」の概念が尾となったりする。あるいは、ある勢力が「自由主義」であるとして実現しようとしている政策が、他の勢力には「反動」にしか見えなかったりする。この場合、正面からお互いが議論をしても、不毛なすれ違いになることが多い。講師h他混乱を回避するためには、迂遠なようでもいったん「そもそも民主主義とはいったいどういう意味か?」という問いに立ち返らなければならないのだ。
政策とは、現状をよりよい方向に変えて行くための行動である。言い換えれば、それはよりよい「価値」の「実現」を目指す行為である。われわれは、それがいかに「実現」されうるかの具体的な手段や過程を、政策科学として学ぶ。しかし、政策科学は「実現」の過程は例示してくれても、「価値」についてはあまり教えてくれない。人々が「実現」の方法にのみ習熟しても、実現すべき目標である「価値」がその素も不明瞭であっては、前述したような混乱が生じるばかりである。「民主主義」がよく分かっていない人間が、どうして「民主化」の運動を実現できようか?それゆえ、「実現」の方法を学ぶ政策科学と、「価値」を考える政治思想は、車の車輪のように双方とも欠かせないものなのだ。
この研究会では、古代ギリシアから始まり、現在にいたる政治思想の流れを把握することに努力することを目標とする。近代のみならず、古代や中正の思想も、決して現実ばなれした空理空論ではなく、その時代ごとの現実政治の中から生まれてきたものばかりである。それらは、現在とは異なった社会状況のもとで書かれたものではあるが、まさにそうであるがゆえに、現代社会を思いもよらなかったような角度から見直す視点を与えてくれる。研究会の展開においては、思想を思想としてだけ読むのではなく、現在の問題に引き寄せて理解するよう努めるつもりである。半年の研究会では、膨大な政治思想の「さわり」程度しか学ぶことはとうていできないが、ぜひ先人たちの知恵の宝庫を「覗き見」していただきたい。
2、研究会スケジュール
一回目のオリエンテーションを経て、発表と講義を行ってゆく。
3、基本テキスト
小笠原弘親・小野紀明・藤原保信著「政治思想史」(有斐閣Sシリーズ)
内田満・内山秀夫・河中二講・武者小路公秀「現代政治学の基礎知識」(有斐閣ブックス)
中央公論社「世界の名著」シリーズ