« 私の夢は、夢なんか捨ててしまうことです | メイン | なんだろう。 »

Mars 22, 2004

あの頃の未来。

いつの間にか未来は通り越してしまったみたいだ。

未来という言葉から、いつもたち現れてくるイメージがある。1000メートルを越える高層ビルが並び、空は光沢のない霞んだオレンジを背景に黒い雲がゆっくりと南へと流れていく。手をつないで歩く二人。会話は交わさない。その少し上空の細い道路を一人乗りの車が超高速で遠くへと抜けていく。

着陸の音が響く。車の騒音はしない。喧騒はとても遠くのモールに集約されていく。空を見上げたまま、微笑む。一箇所に密集した居住区と、再開発が進行中のおかげで、切り取られたような地平線が、やけにながく続いている。

本当ならこの際限なく細かく頭の中に浮かぶ図案や物語を、もしも出来るのであれば絵で提示してしまいたいくらいの、確固たる世界。

それは一言でいうとedge感という言葉がうまく当てはまるかなと思う。西暦1999年の、千年紀が終わるそのぎりぎりの雰囲気。破滅か再生かもわからない分岐点の淵まで、ひたすらに疾走する時代の匂い。

でも、いつの間にかそんな未来は、明日からの未来を思い描いたときに、浮かばなくなっていた。edge感に支配された近未来都市。僕の中に確かにあったあの場所はもう時間軸の前にはなかった。

それは、こうやって昔を思い出すときにしか、あらわれない未来になっていた。
90年代の、あの音楽たちを聞くとき、あのゲームを見かけるとき、GALYが変わっていないなと安心するとき、再び売り出されたたまごっちを買うとき、よぎるだけの世界になってしまったみたいだ。

あの頃の未来を生きていない今。
あまりにも高濃度で押し寄せる日常が、あまりにも当たり前で遍く自分の世界を包み、そして未来をぬぐっていく。

投稿者 POE : Mars 22, 2004 12:55 FM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://web.sfc.keio.ac.jp/~t03881nf/poeg/mt-tb.cgi/136

コメント

コメントしてください




保存しますか?