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April 18, 2005

レシートについて。

感熱紙の耐用年数は十年前後程度と言われている。保存状態が悪ければ、数年ですっかりと印字があせてしまうことも多い。ワープロ時代こそ、そこかしこで感熱紙を目にすることが出来たが、最近はパソコンとプリンターの普及によってあまりお目にかかれなくなった。と、思っていたら間違いである。僕たちは普段、誰でも一日に数回はこの感熱紙を手に取り、目にし、肌で感じている。もしかしたら匂いを嗅ぐ人もいるかも知れない。レシートである。

レシートは感熱紙に印刷されることが多いのである。この事実は実は驚くべきことではないだろうか。ぼくたちは普段「ああ、感熱紙だな」とさえ思いもせずに、レシートを受け取りがちである。しかし、財布にレシートをむげに突っ込んでしまう前に考えてみてほしい。感熱紙に印刷された「レシートはやがて消えてしまう」という衝撃の事実を。

もちろん、紙時代が分解されるまでにはさらに数百年を要するのだろうが、印字が消えてしまうということは、もはやそれはレシートではない。ただのかつてレシートだった感熱紙もどきである。

「確定申告まで保存しておけばすむのだから、レシートは一年以上保存する意義などない」という話ではない。もっと心情的で感動的で衝動的な次元での話である。ものを買ったときに、その証拠として渡されるレシートというものが、この社会から消滅してしまうということだ。しかも、感熱紙を使うのなら消えるという点は前提として自明のことだから、消滅ではなく抹殺と言い換えてもよいのかも知れない。笑顔の店は、このレシートがやがて消えてしまうことを知っているのである。やがて消えてしまうものを、ものを買った証として僕たちに手渡しているのである。

そしてレシートに重ね合わせて見えてくるのは、やはり永久ではない商品のはかなさでもある。そもそもバナナチョコなら数分で消費されてしまうのだから、レシートの耐用年数の十年という期間はバナナチョコにとっては永遠にも見えるのかも知れない。しかし、バナナチョコの問題ではない。バナナチョコを買ったという証さえも消えてしまうのだ。そのとき誰がぼくがバナナチョコを買ったということを認めてくれるのだろうか。

だからこれからは、レシートを見たときに少しだけを思いを馳せてみてはどうだろうか。やがて消えてゆく文字と、社会的に抹殺されてしまうレシートのはかなさを。褪せた感熱紙の侘しさを。機械的であったはずのかつての感熱紙の面影と、セピア色という人間的な温かみ(これもやはり過ぎ去ったものとしての、だが)を同時に併せ持った寂寥感は壮絶でさえもあろう。

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どうしよう、ほかに考えるべきことはたくさんあるのに。
レシートじゃなくて、もっと・・・・
逃げてばっかだ。

とりあえず、寝ちゃったりね。
おきたら別の朝を迎えているほんのわずかな可能性に賭けてみたり。
世界がまるで変わってしまうことを願ってみたり。

自分を主語として考えたとき、
誰も傷つけない選択肢が、
世界の終わりや
世界のねじれだなんて
欺瞞も妄想もいいところだというのはわかってるんだけど。

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やさしい風がいたぶる
幸せな傷口

あまい未来をつんざく
いとしい季節

茜を渡る空の粒に
残した言葉は
鉛色の季節を
越えられたのだろうか


かなしい声がささやく
あいまいなはけ口

つらい未来を引き止める
素直な答え

孤独をつなぐ人の縫目
ほつれた明日を
結び直す指さえ
失くしたままでいた

指先が
ただ少し触れただけで
悲しみが
ただ少しぶれただけで

壊れてしまうほどの夢ならば
いっそなければ良かったのかな

夢見たことを幸せと呼ぶ人もあるけれど
夢の後にはささくればかり目立つ


やさしい風がいたぶる
幸せな傷口

投稿者 POE : April 18, 2005 11:49 FM

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