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Mai 27, 2005

画像=思い出作りコミュニケーション

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[情報通信文化論課題]

■プリクラ
画像を用いたコミュニケーションというお題で一番に思い出すのはプリクラである。プリクラと言えば1995年に登場して以来、女子高生を中心にブームを超えた定番となり今に至る。たまごっちの短命ぶり(去年、こっそり復活しましたけどね)を思えば、その浸透力の強さには目を見張るものがある。プリクラの交換、とりあえず友達が揃えばプリクラ。大学生でもしますよね?

その成功の要因は様々な角度から分析できるだろうが、その因子の一つとしてここで僕が注目したいのはプリクラによる「思い出作り」という面である。「思い出はプライスレス」といったマスターカードのCMを想像してもらえればわかりやすいが、昨今やけに「思い出」といったものに価値を見出す表象が多い。

■日常写真ブーム
たとえばプリクラのブームとパラレルで、日常写真ブームというものがあった。カバンに使い捨てカメラやコンパクトカメラを常時携帯し、日常の何気ない風景を撮りあうという習慣である。たとえば1997年には「アウトフォト」という、素人の投稿写真雑誌が創刊されている。投稿写真といってもテクニカルなものでは全くなく、素人が自己紹介をしあうことが目的の雑誌であり、女子高生のプリクラ手帳の雑誌版のような形態をとっていた。

写真と思い出はかねてから相性がよい。それこそ卒業式の記念撮影でも何でも良いのだが、僕たちは思い出を残すためによく写真を撮る。そして、一枚の写真というものが、様々な物語をのちのち喚起させることになる。

日常写真ブームやプリクラブームも、要はその延長線上の出来事だと僕は思う。高度経済成長期を経て、相当程度の近代化と産業化を達成し、いわゆる大きな物語を喪失した時代において、もはや社会的に共有されるような「特別」は少ない。あるのは個人にとっての個別的な「特別」であり、それは他者にとっては「日常」に過ぎない。つまり、かつては卒業式のような、「特別」な日の思い出だけが特に重視されたわけだが、その範囲が「日常」にまで広がったのだと思う。

■’90女子高生 三種の神器
1990年代の後半、女子高生のコミュニケーションツールと言えば用途ごとに大きく分け三種類があった。まず「声」コミュニケーションのための携帯電話・PHS、「文字」コミュニケーションのためのポケベル、そして「画像」コミュニケーションのためのプリクラやコンパクトカメラである。

結局、この3種類をケータイは全て取り込んでしまったわけだが、注目すべきなのは「画像」コミュニケーションだけはもともと通信に依存していなかったことである。プリクラとは日常の記録であり、思い出作りであり、日常の再発見という色彩が強い。仲の良い数人が集まったからプリクラをとる。「今、ここ」で撮ることが大事なのであって、そのベクトルは他者へは向かっていない。友達とプリクラ手帳を見せ合うことはしても、それを見知らぬ誰かに届けようとまではしまい。

■テレビ電話という奇異なるもの
だから歴史的な文脈で考えれば、テレビ電話の不振は驚くべきことではないのである。少なくとも画像コミュニケーションとは、思い出作りと深く結びついている分野なのであって、電話という1to1コミュニケーションとの馴染みは薄い。発想自体は素朴なテレビ電話であるが、実際に使おうとなるとその新しさに戸惑ってしまう。一体、どんな顔して、どんな態度で、どんな目的でテレビ電話を使えばいいのか。そうした新しいモデルを示すか、もしくは「思い出作り」という「画像」コミュニケーションの伝統(?)に擦り寄らない限り、テレビ電話は普及しないのではないだろうか。

■提言;テレビ電話
個人的に、テレビ電話はケータイよりも、公衆電話と相性が良いと思う。あらゆるケータイにカメラが標準搭載されながら、それでもなおプリクラは流行り続けているのである。それは1)プリクラが個人メディアではない、2)プリクラが場所に根ざしたものであるからだと考える。
つまり、ケータイは近代化の結節点のような徹底的に個人に特化したメディアであるのに対し、プリクラは数人で一緒に撮るというある種近代とは距離を置いた位置に存在している。さらに、プリクラは「今、ここ」で撮るから意味があるのである。「今、ここ」にプリクラと友達がいることが大事なのであって、ケータイのようにどこでも撮れるのではその意味は半減してしまう。
だから、たとえばディズニーランド限定テレビ電話などを設置していけば、思い出作りという画像コミュニケーションの「伝統」に沿うことにもなり、テレビ電話市場の活性化につながるのではないか、と素人は考えてしまうのである。

投稿者 POE : Mai 27, 2005 01:01 FM

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