ISM(Interpretive Structual Modelin)法はもともと、社会システム工学 の分野における、複雑な構造を、定性的に分析して体系的に把握する ためのひとつの手法として、1974年に John N.Warfild によって 提案された理論です。その骨子は、グラフ・マトリックス技法によって 複雑な全体関係を構造化、階層化するというものです。
上のISM法を、教育の場で教える教科の概念や内容を分析し、把握することに 応用することを1978年に佐藤隆博が提唱しました。これが、"ISM教材構造化法" です。
1978年の提唱以降、兵庫県下の公立高、および県立教育研修所での教師研修、 および愛知県や北九州市での教育活動において実践され、大きな成果をあげて います。
また、海外においても、イリノイ大学を拠点に、多くの教育学者、心理学者 に紹介され、実践されています。
ISM教材構造化法は教育現場に限らず、人間の知識理解を助けるための方法 として非常に有効です。ただ、この方法ではグラフ・マトリクス技法を用い るために、コンピュータの利用が不可欠です。
残念なことに、いままでのコンピュータはこのような用途には向きませんでし た。コンピュータを実際に動かすにはプログラムが必要ですが、コンピュータ の種類によってそれぞれ別にあつらえたものでなければならず、そのコストは ばかになりません。また、処理を同じ機械で同時にこなさなければならないた め、現場における実際の活用という意味でも非常に使いにくいものとなって いました。以上のことが実際の普及を妨げた大きな理由でした。
しかし近年、WWWを中心としたInternetなどのネットワークの発達にともない、 特別なコンピュータ、ソウトウェアを用意することなく、あるいは、すべての データを同じ場所、同じ機械に入力しなくても、ISM教材構造化法を容易に 現場で実践するための環境が整いつつあります。
今回は、WWWのインタラクティブな機能を司る CGI(Common Gateway Interface) を使い、コンピュータの種類やOSの種類に依存しない、グラフ・マトリクス 技法の計算を含めた、ISM教材構造化法の支援システムを構築しました。
現時点では、(WWWブラウザーさえあれば)特別な装置、ソフトを持たずともい つでもどこでもISM教材構造化法が活用できる、というところまでの実装です が、近い将来、複数の人間の知識構造の比較分析、およびその結果から本人へ の情報フィードバックをするなどといった、よりきめ細かい部分への対応 を含めた実装を実現することを目指します。