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2004年09月18日

第10回 言論の自由

第10回 言論の自由:通信品位法、2ちゃんねる

C&C振興財団監修、原田泉・土屋大洋編著『デジタル・ツナガリ』(NTT出版、近刊)第1章(上村圭介)、第2章(渡会俊輔)を参照。

■インターネット・コミュニティ、オンライン・コミュニティ、ネット・コミュニティ

インターネット・コミュニティ:インターネットの自由を守ろうとする人々
オンライン・コミュニティ:パソコン通信に参加していた人々
ネット・コミュニティ:パソコン通信やインターネットが作り出すさまざまなコミュニティ

ネットワーク技術は群れを作り出す←ハワード・ラインゴールド『スマート・モブズ』

■1996年通信品位法(CDA)

孫と一緒にインターネットを見ていた上院議員がポルノに衝撃を受け、インターネットのポルノを規制しようとした

#ポルノはインターネットを普及させた要因の一つ←VHSと似ている?

「obscene」と「indecent」:前者は規制されるが、後者はグレーゾーン。

「indecent」な素材の規制は表現の自由を規定した米国憲法修正第一条に違反→CDA違憲判決

インターネット・コミュニティが政治的活動を行った最初のケース→ネティズン(智民)のアクティビズム

インターネットにおける表現の自由とは?

マスメディアのようなメディアの希少性(電波その他kのインフラ)が存在しないから言い放題か?

■パソコン通信

1982年から1983年にかけて日本でも徐々にパソコン通信ホストが開局

1984年7月 日本航空JALNET
1983年3月 Tele Star
1983年5月 アスキーネット
1986年4月 PC-VAN
1987年4月 NIFTY-Serve

企業や自治体、公共施設、個人といったさまざまな主体がパソコン通信ホストを開局

日本で、純粋なパソコン通信の利用者がもっとも多かったと思われるのは、1995年ごろ

1995年6月の段階で、日本の商用パソコン通信サービスの会員は369万人

1996年に入るとパソコン通信事業者大手が、会員に対してPPPによるダイアルアップ接続サービスを提供

■オンライン・コミュニティ

パソコン通信の主要なサービスは、「会員間の」電子メールと掲示板

インターネットとの違い
(1)ほとんどのサービスがテキスト・ベース
(2)すべてのサービスは通信ホストを経由して提供
(3)参加者が通信ホストの提供するサービスの中に完全に囲い込まれていたこと

電子掲示板:一方向的な告知を掲載
電子会議室:複数の参加者が参加してメッセージを投稿しあう
→総称して「掲示板」ということが多くなる

■ニフティ・サーブ

電子会議室サービス(フォーラム)

趣味(鉄道、アマチュア無線、映画、競馬)や学術分野(文学、哲学、歴史、科学)、各種スポーツ競技(野球、水泳、テニス)、生活関連(健康、料理、信仰)、社会問題(女性、教育、恋愛)

スレッドによる議論の整理
シスオペとサブシスによる「管理」(身分制度の存在)
ハンドル名の利用(半匿名)
入会承認

最終的にはニフティが会員情報を把握し、管理が可能で、除名もできる
事業者が提供するシステムとインフラに強く依存

■ニフティ思想フォーラム事件

ニフティの思想フォーラムにおける書き込みが名誉毀損にあたるとして問題になった事例

被害者は、名誉毀損的な書き込みを行った利用者とともに、その書込みを削除せずに放置しておいたとして、シスオペおよびニフティ自体を訴えた

高裁判決の中で、シスオペの削除義務について義務違反は否定

■ニフティ本と雑誌のフォーラム事件

ニフティが不法行為に対して適切な措置をとらなかったために精神的被害を受けたとして損害賠償請求

書き込みを行った本人についてはハンドル・ネームしか分からないため、本人を直接訴えることはせずに、ニフティを訴え

東京地裁の判決は損害賠償請求を棄却

本件各発言がされたパソコン通信についてみるに、フォーラム、パティオへの参加を許された会員であれば、自由に発言することが可能であるから、被害者が、加害者に対し、必要かつ十分な反論をすることが容易な媒体であると認められる。

■パソコン通信からインターネットへ

サービスの比重がインターネットへシフトしていった

電子会議室サービスが急増する利用者に対応するだけの拡張性と柔軟性を持ちえなかった

サービス・モデルが事業者主導であった

強固に設定された著作権によりコミュニティの資産である発言ログが再利用できなかった

掲示板の資産を移行させられなかった

何よりパソコン通信サービスそのものがコミュニティを維持するために必要な要素であった

■ユーザを解き放ったインターネット

入会承認:どこへでも好きなところに匿名でいけるようになった
料金:ダイヤルアップから常時接続へ
技術:GUIが登場するとともに、情報発信が容易になった

■匿名掲示板の台頭

匿名と顕名

匿名掲示板は著作権をパブリック・ドメインに置くことができる?

■動物病院対2ちゃんねる

動物病院の経営者が、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」に自分の名誉を毀損する発言が書き込まれたため、掲示板の管理者に対し書き込みの削除を依頼したにもかかわらず、掲示板の管理者がそれらの発言を削除するなどの義務を怠りその状態を放置したため、精神的損害を被ったなどとして、損害賠償と名誉毀損発言の削除を求めたもの

情報の発信者が分からないため、情報の発信者ではなく、掲示板の管理者に対して書き込みの削除とさらに慰謝料の請求

東京地裁の判決は、動物病院の経営者の訴えを認める

このような匿名で利用できる電子掲示板においては、他人の権利を侵害する発言が数多く書き込まれることが容易に推測され…(略)…被告は、遅くとも本件掲示板において他人の名誉を毀損する発言がなされたことを知り、又は、知り得た場合には、直ちに削除するなどの措置を講ずべき条理上の義務を負っている
(被害者は)本件掲示板を利用したことは全くなく、本件掲示板において自己に対する批判を誘発する言動をしたものではない。……複数と思われる者から極めて多数回にわたり繰り返しされているものであり、本件掲示板内でこれに対する有効な反論をすることには限界がある

被害者の動物病院の経営者は自らについての名誉毀損的な書き込みがなされるまでそのコミュニティに参加したこともなく、知人から指摘されて初めて書込みに気づいている

はじめにこの動物病院についての書き込みを行った者も、書き込みの内容をコミュニティの参加者に伝えたいというよりは、被害者に危害を加える目的で、コミュニティ内にとどまらずできるだけ多くの人に広めたいという意図があった?

■「研究する人生」におけるセンター試験情報の流出

■2001年11月にプロバイダ責任法(2002年5月に施行)

掲示板の書き込みにより、名誉毀損、著作権侵害などで権利を侵害されたとする者は、プロバイダや掲示板の管理者などに対し、
(1)違法情報の削除の申し出
(2)発信者情報開示の請求
を行うことができるようになった。

2ちゃんねるではIPアドレスの取得

しかし、ほとんど影響が見られない

出会い系サイト規制法成立やWinny利用者逮捕の影響と比べると軽微

■掲示板の対応

Yahoo!:書き込みには登録制度を用いる

ニフティ:
事前の会員登録が無くても読み書きができる「オープン」
読むことはできるが、書き込みができない「セミオープン」
会員以外は読むことも書くこともできない「クローズ」

投稿者 taiyo : 2004年09月18日 18:22

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