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2006年02月15日

シンガポールの奇跡

田中恭子『シンガポールの奇跡—お雇い教師の見た国づくり—』中公新書、1984年。

たまたま古本屋で見つけた本を出張中に読む。著者は、1973年にシンガポール大学文学部助教授になった(現在は南山大学総合政策学部のようだ)。現在のシンガポール「国立」大学は、当時のシンガポール大学と南洋(ナンヤン)大学が統合されてできた。南洋大学あったところには現在は南洋工科大学がある。70年代のシンガポール大学はイギリス統治を受け継いだ英語で教える大学、それに対し後発の南洋大学は華語で教える大学として作られたそうだ。しかし、英語が話せないと良い職に就けないという問題が顕著になり、リー・クアン・ユーが介入して両大学は統合されたという。

今回、シンガポール国立大学に行ったり、南洋工科大学の先生に会ったりしたが、そんな歴史があるとは知らなかった。この本の中でイギリス流の教育が大学に残っていると書いてあるが、それがまだ残っているらしく、授業は1時間半の講義と30分の演習がセットになって、2時間もやるそうだ。

この本には中国語(華語)を話せない中国系シンガポール人の話が随所に出てくる。先祖が同じでもずいぶんとライフ・スタイルは変わってしまうものだということを考えさせられる。国の政策が大きな役割を果たした例としてシンガポールは位置づけられる。

2005年09月02日

イノベート・アメリカ

ニューオーリンズあたりのハリケーン被害がすさまじい。アメリカ版の津波というのもうなずける。まさに緊急事態だ。ワシントンDCの街中では特に反応は見られないが、新聞によれば、救助に動き出しているグループもあるようだ。ガソリンのいっそうの値上がりが懸念されている。長期的には経済全体にも影響が出ることは必至だろう。

ところで、今回の調査ではいろいろなことを聞いているが、そのうちの一つが『イノベート・アメリカ(Innovate America)』、別名パルミサーノ・レポートのことだ(NEDOワシントン事務所の松山さんのレポート[pdf]参照)。パルミサーノとはIBMの会長の名前で、たくさんの専門家を集めたCouncil on Innovationというところが作成した(しかし、なぜか、昨年12月に出たファイナル版はウェブから削除されている)。1980年代に日本の挑戦に対応するためにヤング・レポートというのが出されたことがあるが、それと重ね合わせてみる向きが強い。

おもしろいのは、シリコン・バレーの人は一人も知らなかったこと。「知らないね。ワシントン的な発想のレポートだな」という人が多い。ワシントンDCの人はたいてい知っている。あまり政党色は出していないものの、若干、民主党色が出ているため、ブッシュ政権はほとんど反応していない。ヤング・レポートのように本格的に議論されるのはもう少し先なのかもしれない。

2005年08月23日

今日は午前中に潜水艦と護衛艦の内部を見学。当然のことながら写真撮影は制限されているが、見られるだけでもいい。

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潜水艦内部は映画で見るような感じで、パイプやコードなどがむき出しになっている。これはすぐに原因究明・修理ができるようにするためだそうだ。それほど圧迫感はなかったが、やはり狭い。あらゆるものがコンパクトに作られている。特に船室と船室をつなぐドアが密閉できるように小さく作ってあるため、移動がやや大変(もちろん慣れればどうということはないのだろう)。潜望鏡の精度に感心。

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護衛艦は、かつて戦艦大和が造られた造船所の隣に停泊していた。140人乗りだが、艦長は全員の名前と顔を覚えているそうだ。艦長の任期は意外に短く、1年から1年半ほどだという。艦長は命令が下ればすぐに出航できるように、港にいるときでも呉から離れられないそうだ。招集がかかれば乗員は1時間で集合し、45分で出航できるようになっている。

なぜ旧海軍は呉に軍港を造ったのか聞いてみると、内海で防衛がしやすく、港の水深が確保されていて、飲み水が確保しやすいからだそうだ。

1泊2日だったが非常に充実していた。現場を見ることで分かることがたくさんある。自衛隊と聞いて眉をひそめる人もいるが、現実に存在しているものだし、その実態を見ておくことは議論をする上でも重要なはずだ。

2005年08月22日

大和ミュージアム

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江田島の後、対岸の呉で大和ミュージアムを見学。呉市が戦後60年をねらって建てたミュージアムだ。目玉は戦艦大和の10分の1の模型。けっこうな迫力だ。上のフロアに行くと宇宙戦艦大和の展示コーナーもある。

このミュージアムには50万人も訪れたそうだ。日本は右傾化しているのか……な。

江田島

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広島の江田島に来た。海上自衛隊の第1術科学校があり、旧海軍兵学校があったところだ。

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この煉瓦はその昔ロンドンからわざわざ取り寄せたそうだ。さわるとツルツルしている。

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若き自衛官たちは五省で一日を振り返る。

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これが有名な教育参考館。残念ながら内部は撮影不可。東郷元帥やネルソン提督の遺髪まで保存されている。

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F君が見上げるのは戦艦陸奥の主砲。とにかくでかい。

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江田島自体は思っていたよりも大きい。海軍兵学校はもともと東京にあったそうだが、都心の繁華街を避けるために江田島に来たという。

江田島は第二次世界大戦の際にも米軍は直接攻撃せず、戦後はしばらく米軍に接収されていたため、建物もよく残っている。戦前の状態を知るには格好の素材といえるだろう。

2005年08月01日

合宿

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研究会の合宿で御嶽山に行く。宿にたどり着くにはケーブルカーに乗らなくてはならない。

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山頂には御嶽神社がある。

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朝5時から滝行に参加した勇者7人(私は遠慮した)。右端は駒鳥山荘のご主人(ブログでも紹介されている! 御世話になりました)。駒鳥山荘は安永5年(1776年)創業で、現在のご主人は17代目。今年5月に青梅で初めて光ファイバーを入れたとのこと。山の上で軽快なネット接続が可能。

2005年07月22日

才能の赤字

最近話題になっているRichard Floridaが「A dire global imbalance in creativity」という文章をFT.comに寄稿している。

才能の赤字(talent deficit)は双子の赤字に続く米国の第三の赤字だそうだ。

2005年07月10日

見学

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学生たちと靖国神社を見に行く。別に定見があるわけでもないのだが、何事も自分で確かめてからでないと。

確かに大鳥居は大きかったが、神社そのものはそうでもなかった。桜の季節はきれいだろう。もうすぐお祭りがあるらしく、参道にたくさんの提灯が飾り付けられている。それぞれに名前が書いてあるが、おそらく寄付をした人の名前なのだろう。膨大な数だ。この提灯の数を見るだけでも、マスコミには出てこない多くの人々が靖国神社を支持していることが分かる。

脇にある遊就館には零戦が置いてある。ただ、どこの国に行っても軍事博物館はあり、国際比較で見てみれば、大して差はないだろう(自己正当化という点では米国のNSAの国家暗号学博物館のほうがよほどどぎつい)。

遊就館の展示の最後のほうにある戦没者の写真や遺書を読むと、日本兵も普通の人たちであり、大事な家族がいたことが分かる。分からないのは、なぜ国家は彼らにあんな戦争に行かせたのかだ。50分間放映されるビデオでは、戦わずして負けるよりも、戦って負ける方が民族の誇りを保てると主張していたが、戦わずして勝つ方法を考えるべきだろう。

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この図は、展示資料の一つだ。石油76.7%、鉄類66.9%を依存している相手に戦争を仕掛けるのは普通ではできない。自国の置かれた位置をどれだけの人が理解していたのだろう。

2005年02月15日

マハン海軍戦略

アルフレッド・T・マハン(戸高一成監訳、井伊順彦訳)『マハン海軍戦略』中央公論新社、2005年。

今頃なぜ新訳が出るのか不思議だが、買ってしまった。なぜか「です、ます」調で訳されている。課題書にするかもしれないよ、GSの皆さん。

2004年12月28日

第四のパワー

Gary Hart, The Fourth Power: A Grand Strategy for the United States in the Twenty-First Century, Oxford University Press, 2004.

アメリカの元上院議員ゲーリー・ハートが書いたグランド・ストラテジー本。元政治家の本とはいえ、彼は引退後の2001年にオックスフォードから政治学の博士をとっている学者肌で、これまで13冊の本を出しているそうだ。

B・H・リデルハートの戦略論を引用しながら、冷戦体制崩壊後のアメリカにはグランド・ストラテジーがないと嘆いている。前書きを読む限りはジョン・ギャディスやポール・ケネディ(リデルハートの弟子)の影響を受けているようだ。

第四のパワーとは、政治力、経済力、軍事力に次ぐ「理念の力(the power of principle)」だそうだ。アメリカが今進み始めている帝国主義のグランド・ストラテジーは、建国の理念である民主的な共和主義の理念(the democratic republican principles)にそぐわないというのが彼の批判だ。

話はそれるがシンガポールの紀伊國屋書店はすばらしい。東南アジア一の売り場面積だそうだが、日本語、英語、中国語の本がどっさりある。東京でもこれだけ英語と中国語が揃っているところはないだろう。日本語の本だってその辺の本屋よりずっとたくさんある。ここに住んでいても研究上苦労することはないだろう。

もう一つついでに言うとハートとネグリがいつの間にか『Multitude』という『Empire』の続編を出していた。知らなかった。私にはどうも難解でピンとこないのだが読んでみよう。

No Revolution, Only Evolution

シンガポール国立大学の教授といろいろ話ができた。彼自身は実はシンガポール国籍ではなかったので、いろいろ率直な意見が聞けておもしろかった。専門的技能を持っていればシンガポールで永住権を獲得するのは簡単らしく、彼も持っている。彼は生まれたところと、国籍を持っているところと、今住んでいるところがすべて異なる。

まず、個人情報保護の話。パスポートとは別のIDカードを持ち歩いているが、パスポートと番号は共通。これはあらゆるところで使われるが、パスワードが付いている。ウェブを含めていろいろなところでこの番号が使われるが、パスワードがないとさまざまなサービスは受けられない。基本的には納税者番号として使われている側面が強い。シンガポールでは所得のかなりの割合が強制的に積み立てにまわされるシステムになっているので、その際にもこの番号が使われる。

言論統制の話。確かにポルノなどは規制されているが、みんなCNNや海外のニュースには接しているし、日常生活においてはどうということはないらしい。この点について研究しているシンガポールの研究者がいないのも確か(理論的な研究者はいる)だが、それほど強い圧力があるわけではない。

エリート主義の話。確かに古い世代が新しい世代を選抜しており、似たような思想傾向を持つ人が指導的に地位についていることは否めない。しかし、シンガポールに革命はいらない。環境変化に応じた進歩さえあればいい。これが多くの人の考え方だそうだ。民主主義は革命の制度化だから、その民主主義に歯止めをかけておこうという考え方は、筋が通っているといえば通っている。

体制批判についてもっとも口が軽いのはタクシーの運転手だそうだ。さっそく試したのだが、日本で11年間働いたことのある運転手だったので、日本の話だけで終わってしまった。

2004年12月26日

頭脳国家

シンガポールは二回目なのだが、今回はシンガポール国立大学の先生と話をしなくてはいけないので、飛行機の中で予習。たまたま見つけた二冊が同じ先生によるものだと気づいた。たぶん第一人者なのだろう。

田村慶子『「頭脳国家」シンガポール』講談社現代新書、1993年。
田村慶子編著『シンガポールを知るための60章』明石書店、2001年。

どうしても言論統制やら治安維持法が気になってしまうのだが、それ以外でおもしろかったのは、リー・クアンユーら指導層があまり民族的ではないらしいという点。第一世代の指導者たちはイギリスで教育を受けた中国系なのだが、人種意識が強くなく、エリート意識のほうが圧倒的に強い。最終的には中国系しか首相にはなれないようなことが示唆されているが、それでも優秀かどうかを徹底的にふるいにかけて第二世代、第三世代を選んでいる。コネは通じない。リー・クアンユーの息子も誰もが認める優秀さがあるから昇進しているようだ。

問題は、第一世代と思想傾向を同じくするクローンしか次世代の指導者として選ばれないこと。反論するものはあっさり追い落とされるので、確かに「優秀」なんだが、異論は許されない雰囲気があるようだ。大学を卒業できる人は確実にエリートであり、エリートは指導層による盗聴もかいくぐりながらエリート再生産のスパイラルを上っていく。

それもこれも、資源がない都市国家としてのサバイバルという国家目標が定まっているからに他ならない。第一世代としては、今の繁栄が脆弱なものに過ぎないという危機感が強いのだろう。シンガポール国立大学の教授に今晩聞いてみよう。

2004年11月10日

再選ブッシュの外交政策

ブッシュ政権の今後の外交政策に関してブルッキングス研究所とCSISが専門家の討論会を開いたそうだ。地政学なんて言葉が出てきているなあ。

1. ブルッキングス研究所
Richard C. Bush III, Philip H. Gordon, Fiona Hill, and Martin S. Indyk, "The Direction of U.S. Foreign Policy," Brookings Institution, November 4, 2004 (pdf, 43p).

2. 戦略国際問題研究所(CSIS)
Kurt Campbell, Patrick Cronin, Teresita Schaffer, Jon Alterman, Robin, Niblett, and Bathsheba Crocker,"New Administration's Foreign Policy: How Election Results will Affect Geopolitics, Global Perceptions," CSIS, November 4, 2004 (pdf, 29p) .

2004年10月15日

中国の戦略研究

中国からの留学生の韓君がブログで中国の戦略研究の本を紹介してくれている。

鈕先鍾『戦略研究』広西師範大学出版社、2003年8月。

先日の研究会の時の話では、中国の大学で必須となっているのは毛沢東思想とトウ小平思想で、あまり戦略論はやっていないそうだ。戦略論に関する本を見つけるのは難しいようだが、この夏休みに見つけてきたのが上記の本というわけだ。

2004年08月04日

複合不全

日本をよく知る研究者と夕食をともにした。彼は日本語が堪能なこともあり、ここ数年毎月のように日本に通って、電子政府の講演を続けてきた。しかし、もうしばらくは行くのをやめるという。いくら改革を勧めても日本は一向に変わる気配がないからだという。

なぜ日本の電子政府が進まないのか。同行しているシンクタンクの研究員は、行政の職員に何もインセンティブがないからだという。減点主義の行政では何か新しいことをやって失敗すると、昇進に響く。改革派の首長に従って新しいことを始めても、首長が変わってしまえばはしごを外される。

しかし、地方自治体では多選が現実なのだから、首長がその気になればいい。ところが、その首長がITにまったく興味がない。自分が知らないことを進める気もないし部下に教えを請うこともいやなのだろう。だが、ある市では、市長が自分で電子メールの返事を出したら、職員が一斉に使い始めたという。潜在的なニーズはある。首長のためのIT講習をこっそりやってもいいはずだ。

なぜやる気のない首長がそもそも当選してしまうのか。韓国では落選運動も激しいし、政治家のブログのランキングまであるそうだ。日本の政治家の中で自分でブログを書いている人はまだまだ少数派だろう。そもそもITが使えるということは政治家の資質には入っていない。選挙でインターネットを使うことすらできない。

e-Japanで日本中でブロードバンドが使えるようになったと総務省は胸を張った。しかし、同じ総務省(の自治省系)は選挙にインターネットを使わせない。選挙は紙でやるもので、インターネットでは多くの人に情報がいきわたらないからだという。これは大きな矛盾ではないだろうか。

シンクタンクがそうした批判と提言をすればいいではないかというと、シンクタンクは役所の仕事で食っているからできないという。その韓国の研究者は、「日本では役所にぶらさがって生きている人が多すぎる」という。その通りだ。見かけ上、霞が関や地方自治体の職員は減っているが、財団法人や関連団体に追いやられているだけで、事実上公務員という人がたくさんいる。シンクタンクや大学なども、政府のお金で仕事をしている部分が大きい。

では、政府から独立した大きな資金があるかというと、アメリカ型の大きな財団は育っていない。市民側にも寄付をする土壌やインセンティブがないし、財団を作れば節税行為にしか見られない。どこかにあるはずのお金が日本では回っていない。

韓国は今、IMF危機を上回る経済不況にあるという。だから、ITによって景気回復が進むというほど単純ではない。韓国の家電メーカーは輸出で大いに儲けているが、その儲けを投資に回さないので、国内で金が回らない。ITで人減らしがどんどん進んで、失業率が高止まりしている。それでもこれが本当の構造改革だと韓国の人々は信じて、次を目指そうとしている。

日本は、構造改革といいながら、どうしても韓国ほどの危機感を持てない。不況の10年だって、多くの人がほどほどに幸せに生きてこられた。しかし、複雑に絡まったさまざまな社会機能の不全をそのままにして景気が回復してしまうと、いい方向に行くかもしれないが、問題を先送りにしてしまうだけのような気もする。「韓国なんて見てもしょうがないよ」という人はいまだに多いが、そんなことはない。社会システムが似ている韓国から学べることはたくさんある。

2004年04月26日

賢力と愚力

ワシントンDCのホテルの予約がなかなかとれなかったので、おかしいなあと思っていたら、大規模なデモとぶつかっていた。昨日(24日)は世界銀行とIMFに反対するデモ隊が市内に繰り出して、警官隊と衝突していたらしい。

今日(25日)は「プロ・チョイス」の人たちが全米から集まっている。朝からニュース各局は中継をしている。プロ・チョイスの人たちは民主党支持層と重なるから、反ブッシュの色合いも強い。

今日の午前中は予定がないから、メトロ(地下鉄)に乗って、モール(ワシントンDC市内を横断する公園)に行ってみた。日曜日の朝のメトロはたいていがらがらなのに、今日は上りが満員。バッジやプラカードをつけた人が乗り込んでいる。スミソニアン駅を降りるとモールまで長い人の列ができている。

モールにはうじゃうじゃ人がつめかけている。日本なら黒山の人だかりというのだろうけど、髪の毛が黒くないし、みんな色鮮やかなTシャツやプラカードをつけているから華やかだ。

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(この写真は合成写真みたいに見えるけど本物です。)

プロ・チョイスは女性の権利と自由のための運動だけど、それを支持する男性もそれなりに来ている。ただ、どうもヨーロッパ系の人が多くて、アジア系やアフリカ系の人は少ないように見える。年齢は子供から年配までさまざま。掛け声もいさましい。ある種、お祭りのようでもある。

しかし、プロ・チョイス対プロ・ライフの対立は、アメリカ政治の大きな軸の一つだ。これだけ深刻な問題を回避せずに、自分の意見をこうやって大声で叫ぶ政治文化は、日本と違うなと思ってしまう。少なくともこの問題に対して、これだけの人間が日本で一同に会することはないだろう。演説台があり、あちこちに巨大モニターとスピーカーが設置されていることから見ても、かなり組織化された運動ではあるが、実際にこれだけの人が動員されているのを目の当たりにすると、政治的なパワーを感じてしまう。

帰りの電車の中で「賢力と愚力」という言葉が思い浮かんだ。こうした大衆が動かす政治を政治家たちは衆愚政治と呼んで蔑んできた。しかし、賢い人たちがやっている賢力政治は権力政治とほぼ等しいと受け止められている。賢力と愚力の間にはそれほど開きがないのかもしれない。もし、大衆が情報技術を使って賢力を持つようになったら、政治は大きく変わるのだろうか。