変化する景観の評価に関する総合的研究報告書
淡路景観園芸学校には、タスクフォース型共同研究推進費という学内の競争的資金があり、学内外の研究者で研究グループを形成し、毎年共同研究を行っています。2005年度には、一ノ瀬が研究代表者となり、「変化する景観の評価に関する総合的研究」という題名で、研究費をいただきました。ここでは、その1年間の研究成果をご紹介します。なお、ここで紹介されている内容は、成果報告書として印刷されたものと同じですが、印刷物は白黒であるのに対し、ここではカラーのpdfファイルをダウンロードしていただけます。目次のそれぞれの章をクリックしてください。すべてpdfファイルです。研究メンバーについては、以下の「研究の概要」を見てください。また、報告書には、特別に文化庁の平澤毅氏に寄稿頂きました。
目次
1999年4月に開校された兵庫県立淡路景観園芸学校は、「景観」という言葉を名称に取り入れた初めての教育機関である。筆者は、本校のランドスケーププランニング研究室に開校時から所属しているが、「ランドスケーププランニング」という名称が研究機関の研究室に使われるのもおそらく日本で初めてであろう。2004年12月に景観法が施行され、最近は景観に対する国民の関心が高まっているが、淡路景観園芸学校では、開校当時から多角的にこの景観を研究対象として取り上げてきた。
しかし、この景観という言葉は実にやっかいな用語である。風景や景色、風土など、似たような意味で使われる言葉も多い上に、専門分野によってその定義や扱い方が大きく異なる。景観という用語は、建築学、土木学、造園学、地理学、生態学、歴史学など、様々な分野でよく使われるが、それぞれが意味する内容は驚くほど異なることが多い。さらには、例えば、地理学や生態学の分野では、見た目という意味合いが強い現在の景観という用語に違和感があるとし、「景域」や「景相」といった異なる用語が提案されたり、英語のlandscapeをそのままカタカナにした「ランドスープ」とした方が良いという意見があったりと、用語の混乱が見られる。このように景観は、なかなかとらえどころのない厄介者ではあるが、それぞれの分野では魅力的な研究対象でもあり、数多くの研究がなされてきた。しかし、そのほとんどが、特定の研究分野のみからアプローチしたもので、複眼的な景観研究はほとんどなされてこなかったといって良いだろう。
本共同研究では、淡路景観園芸学校が持つ、分野の幅の広さを強みとし、複眼的な景観研究を目指すこととした。また、景観を計画したり、保全したりといったことが近年大いに注目されているが、人間活動と自然環境の総体としてとらえられる景観は、変化するという必然性を持っている。よって、一時期だけを取り出しての評価や計画を行うことが最もなじまない。そこで本研究では、景観の変化に特に着目し、学外の研究者も加え、異なるアプローチから切り込むことを最大の目標とした。
本共同研究は、景観を対象として本校で初めて多角的に取り組まれた研究であるので、まだ景観研究の体系化にまではまだ長い道のりが考えられるが、今後の複眼的な景観研究の貴重な一歩になったと考えている。この成果を踏まえ、さらに景観研究を深化させていきたいと考えている。
2006年3月
研究グループを代表して
一ノ瀬友博