イギリスを旅行する技術(移動編)

 ホテル編に続き、移動編を作りましたが、ホテルに比べて、移動に関しては他のガイドブックに載っていないようなすてきな情報があるわけではありません。しかし、イギリスを旅行するときに、どんな移動手段があり、なおかつそれぞれの旅行者にとって適切なのか、簡単に紹介したいと思います。

 まず、イギリスに限らずどこでも旅行する際の移動手段には主なものに以下のようなものがあるでしょう。

何となく遅い順に並べてみました。さて、まず歩きです。歩いて旅行するのももし時間があれば、イギリスでは楽しいかもしれません。多くのイギリス人が、イングランドからスコットランドまで昔のローマの道をたどって、1週間や10日間の旅をしたりします。イギリスはいわずとしれたハイキング天国なので、至る所にフットパスといわれる自由に歩ける歩道が存在します。(逆に言うとフットパスに指定されているところ以外は立入禁止です。)天気はひどいのですが、ハイキングコースに恵まれ、すばらしい体験ができますが、それを書き始めるときりがないので、ここではフットパスがすべて示されている2万5千分の1地形図を発行している英国測量部のページだけ紹介しておきます。

http://www.ordnancesurvey.co.uk/oswebsite/

 次に、自転車ですが、他の多くのヨーロッパの国々のように、イギリスのたいていの電車には自転車を乗せるスペースがあります。そういった意味では、自転車旅行も良さそうですが、自転車天国のドイツやオランダと違って、自転車道の整備は大変遅れています。(でも、日本よりましかも。)さらに、農村部の道路は狭く、歩く余地もありません。多くの日本の田舎の国道と同じです。さらに、あとで書きますが、その道路を皆60マイル(時速100km弱)で、車はぶっ飛ばしていくので、命がいくらあっても足りません。通学通勤ならまだしも、自転車での旅行は安全面からお勧めできません。もっとも、スコットランド(特に北部)では夏に多くの自転車乗りがやってきます。交通量が少ない地域では、それほど危険もなく、快適かもしれませんが、スコットランドを含め、イギリスは大変風が強いので、それも考慮に入れなければなりません。

 ちょっとだけ、馬。私はもちろんイギリスで乗ったことがありません。でも、こちらでは乗馬は上級な趣味で、乗馬のための道もまた良く整備されているとのことです。実際に休日には、あちこちでよく見かけます。そもそも、街中には騎馬警官がいるし。旅行者が馬を使って旅行することはないでしょうが、レンタカーを運転しているときには十分に気を付けなければなりません。

 はい。やっと、一般的な移動手段に入りますが、まずバスです。イギリスではバス一般をコーチ (Coach) といいます。コーチには大きく2種類あって、街中を走る通常のコーチと都市間を走る長距離コーチです。その長距離コーチは、貧乏旅行をする方にとって、強い味方になるでしょう。

http://www.nationalexpress.com/

長距離コーチでは、このNational Expressが最も大手です。ほとんどありとあらゆるところを走っています。また、関連会社が、ヨーロッパ内の国際的な路線も持っています。なんといっても魅力なのは、安いこと。最も安いときには、かなり長距離でも、1ポンドといったような値段設定もあります。ロンドンーマンチェスター間でも、一番安いときは2ポンドです。また、ユーレイルパスの様な期間を決めた乗り放題チケットもあります。また、夜行専用のバスというわけではありませんが、夜中もけっこう便があるので、バスで移動してホテル代を浮かすということもできます。ただし、時間はかかります。電車の1.5から2倍は見た方が良いでしょう。もちろん、ロンドン周辺では大渋滞にあいます。さらに、車内ですが、一般的な高速バスの仕様ですが、長時間になるとあまり快適とは言えません。また、あちこち経由して、その間一定の時間止まることは良くありますが、日本の高速バスのように休憩時間があるわけではありません。しかし、長距離の便にはもちろんトイレは付いています。座席は自由席で、日本人には十分な広さがありますが、大きく太い人が多いイギリスでは隣の人がどういう人かによって快適性が大きく変わるでしょう。National Expressは日本のバスのように正確にと言うわけにはいかないですが、比較的時間通り走っているようです。ただし、例えばバスが壊れてとんでもなく遅れても、当たり前のようになにも保証はありません。(イギリスではすべての交通機関で当たり前のことなのですが・・・)くれぐれも、空港にバスで行く際には十分な余裕を、それからバスの乗り継ぎはやめた方が良いでしょう。

http://www.megabus.com/

他にも都市間を走る長距離コーチの会社はいくつかありますが、一つだけあげておきます。

 都市内のバスですが、日本でいう市バスみたいなものの多くが、イギリスではダブルデッカーです。いわゆるロンドンバスという名称で日本で知られていますが、2階建てバスですね。1階か2階かに関わらず、またどこの都市でもたいてい市内のコーチは、ワンマンで、先払いです。自分が乗るバスが来たら、腕を横に上げて止まるように合図します。バスが止まったら、前から乗って運転手に行き先を告げてチケットを買います。そのときに、片道をsingle、往復をreturnと言います。(バスに限らずイギリスではすべてそうですが、米語と違うので要注意。)すると、値段を言われるので、お金をトレイの上に置いて、前の方から印刷されて出てくるチケットを取ります。returnを扱っていない会社や路線がありますが、returnがあれば、絶対にお得です。たいていsingleとほとんど変わりません。(これは電車も。)他にも、1日券や1週間券などがあります。はい、なにも難しいことはありませんね。といいたいところなのですが、この市内のコーチが旅行者にとっては大変な難関です。というのは、大きな都市では、中心部にその行き先に応じてやたらいっぱいバス停があり、インフォメーションはたいてい要領を得ず、さらにバス会社がたくさんあります。そして、なんとバス会社によって皆料金が違う上に、その区間も全く違います。簡単に言うと、10社バス会社があって、同じ路線を皆走っていても、同じく間の値段が全く違うのです。下手をすると2倍になるときさえあります。さらに、値段が変わる区間設定も異なります。また、中心部のバス停以外は、バス停の名前がありません。バスに乗るときには必ず運転手に「どこに行くの」と聞かれるのですが、どう答えていいのかさっぱりなのです。住んでいる人は、通称になっているゾーンの名前を言います。「大学」だったり、「大手のスーパー」だったり、しかし、それがまた違う会社になると通じないこともあって・・・。何とも全く秩序というものが見られないのが、イギリスの市内バスなのです。その料金もころころ変わります。イギリス人に言わせれば、自由競争の賜物であるそうですが・・・。その市内のバスにどう乗るか。最も大事なのは”気合い”です。気合いがないとバスに乗れません。行き先は地図を持っていれば、それを運転手に示す手もあります。ただ、降りるところがわからないことが多々あります。当たり前のように「次のバス停は・・」というようなアナウンスも、電光掲示板もありません。また、運転手に、そこについたら教えてねと言っておいて、OKなんて言われたからって全く安心できません。たいていちゃんと教えてもらえません。またバス停の度に、「ここ?」と運転手に聞いている人もいますが、込んでくるとそれもできません。きっと一番は近くの乗客に聞くことでしょう。自分が降りるところより手前であれば、きっと教えてくれます。おばさんか、おばあちゃんがいいでしょうね。そんなとんでもないバスなのですが、実はイギリス人の普段の足はこのバスであることがほとんどです。バスが全然来なかったり、手を挙げても当然のように通り過ぎられたり、降りようとブザーを押したのにあからさまに止まってくれなかったりしても、やっぱり安いからでしょうね。バスに限りませんが、イギリス人はとんでもなサービスや対応があっても、滅多に怒りません。日本人と大違いです。


 さて、次は、どこでもメジャーな移動手段である鉄道です。なんと言ってもイギリスは、鉄道発祥の地です。さぞかし、それではすてきな鉄道システムがと思いきや、とんでもありません。機関車トーマスは、イギリスの架空の島ということになっていますが、機関車トーマスと同じくらいトラブルが多いのがイギリスの鉄道システムです。その原因は、老朽化したインフラや同じ線路をいくつもの別会社(オペレーターと言います)が走るというシステムであるそうですが、とにかく15分遅れは遅れているとはいわず、どの電車も終点近くなると、40〜50分遅れていたりします。また、チケットの価格は非常に複雑なシステムで決まります。同じ電車の同じような席に乗っても、価格が5倍以上も違うこともあります。まさに飛行機と同じようなシステムです。もちろん、安いチケットでは、乗り換えの際に前の電車が遅れてしまうと次の電車に乗れなかったりします。安いチケットでは予約した電車以外に乗れないことも多く、結局チケットをその場で買い直したりする必要も出てきます。そんなことに備えて、安いチケットを買う際には、それを補償する旅行保険などを勧めてくれるのですが、なんだか便利なのか不便なのか・・・(結局とんでもなく不便です)。とはいえ、イギリスにはすてきな蒸気機関車の保存鉄道も多く、多くの鉄道ファンのあこがれの的だそうですし(たまにトーマスも走ります)、スコットランドではまさに別世界のような景色の中を走る有名な路線もあります。でも、日本からの旅行で鉄道を使うのであれば、ブリッドレイルパスなどを使った方が良いでしょうね。そして、旅程には余裕を持ってください。なお、イギリス国内の電車の検索は以下のページでできます。クレジットカードを使った購入のページにもつながりますし、安いチケットを検索できます。ただし、チケットの郵送にはかなりお金がかかりますし、チケットを取りに行く際には、規模の大きな駅に限られます。

http://www.nationalrail.co.uk/


 旅をするときに、レンタカーをよく使う人と全く使わない人と大きく別れるようです。使う人はやはり便利だからという理由のようですが、使わない人は知らない土地で事故を起こしたら大変だしと敬遠されるようです。特に海外となると、多くの国が日本と反対の右通行が多いですし、遠慮したいという気持ちもわかります。しかし、イギリスは日本と同じ(というか日本がイギリスと同じ)左側通行です。さらに、高速道路は無料で、重大はあるのですが日本ほどではありません。そして、なによりもイギリスの良さはまさに田舎にあるのです。ロンドンだけの旅行でしたら、車は無用の長物ですが、ロンドン以外に足を伸ばしたければ、イギリスで最も確実な移動手段となりうるのが、実はレンタカーです。以下に挙げるようなディスカウントのレンタカーを使えば、それほど料金も高くなく、事前に予約していくので、手間もそれほどかからずに、そしてたいてい乗り捨ての無料でできます。こちらに来てから私も何回かレンタカーを使っています。

http://www.holidayautos.co.uk/GBR/index.html

たいていここが一番安いようです。ただし、大手のレンタカーではなくて、地元のレンタカー会社を斡旋されます。

http://www.connectcarrental.com/

ここは使ったことがありません。

このほかにもあとで挙げる安い航空会社のホームページには必ず提携しているレンタカー会社があり、予想外に安く使えるときもあります。ライアンエアーは、Hartzと提携していて、かなり安く借りたこともあります。

 イギリスで車を運転するときは、大きく2つに気をつけなければなりません。一つはラウンドアバウト、もう一つはスピードです。ラウンドアバウトは日本で言うロータリーですが、これがたくさんあります。原則は、丸い円に入って好きなところで出るので信号がいりません。自分の右から来る車が優先で、かつ中に入っている車が優先です。とにかく、自分の右に注意していて、隙を見て入ってしまえばこっちのものですが、慣れないうちはタイミングが難しいかもしれません。なおかつ、かなり大きなラウンドアバウトもあって、その中で車線変更を順次していかなければならないものはやっかいです。基本は無理せずうまくいかなければ、もう一周です。ただし慣れないうちは全然違うところで出ざる得なくなったり失敗します。もう一つのスピードですが、こちらは高速が制限速度70マイル(約時速110km)、高速でなくても片側2車線の道路であれば、70マイルです。そして、一般の道路は制限がなければ、60マイル(約時速100km弱)です。市街地や制限があるところは多いのですが、日本では絶対制限速度50kmになるような田舎の細い道が制限がなくなり、60マイルになります。イギリス人はそんな道をレーサーのようにとばして走ります。この早さに調子に乗らないことです。また、イギリスではどこでもたいてい追い抜きができるので、どんどん追い抜いていってくれるので、マイペースで走っていても大丈夫です。市街地や制限速度が決まっているところでは、オービスがたくさんあって、しっかり監視をしています。くれぐれも見知らぬ土地なので、安全運転で。イギリスでは、何気ない田舎道で、すばらしい景色のところを見つけることが良くあります。それはまさにレンタカーでの旅の醍醐味ですね。


 最後は飛行機です。ヨーロッパでの飛行機の価格破壊は有名になりつつありますが、イギリスを含め、ヨーロッパでは移動距離やかかる時間などと交通機関の運賃は本当に関係なさそうです。ここでは、通常の旅行会社は別として、格安の飛行機会社を紹介します。

http://www.ryanair.com/

まずは、ライアンエアーです。最近では、次のイージージェットのお株を取る安売り戦略で、たいてい無料か50ペンス(100円ぐらい)のキャンペーンをやっています。そのネットワークも、非常に幅広く、その割には比較的時間通り飛んでいるようです。もちろん、空港税など諸経費はかかりますが、安いときにはだいたい5000円ぐらいで各都市を往復できます。イギリスでは、ロンドンのスタンステッド空港が最も大きな拠点です。私も使ったことがありますが、それほど不安感はありませんでした。もちろん、機内でのサービスは有料ですし、座席の指定もありません。これはだいたい安い飛行機会社共通です。

最近の情報ーライアンエアーの発表によると、イギリスの航空会社の運行状況を調べている会社の調査によると、最も定時運行がなされれているのはライアンエアーだそうです。私も2度使いましたが、遅れたことがありません。もちろん、他の主要大手飛行機会社と違い、乗り継ぎを扱わないからということも大きいと思いますが。

http://www.easyjet.com/en/book/index.asp

飛行機料金の価格破壊の急先鋒となったイージージェットです。しかし、最近は安売り競争は避けているようで、どちらかというと質の向上を目指しているようです。私も使ったことがあります。北アイルランド、アイルランド行きは安いようです。思ったより、地上の係員、機内の搭乗員ともにてきぱきしており、好印象でした。もちろん、自由席です。

http://www.jet2.com

最近、できたばかりの飛行機会社です。使ったことはありません。マンチェスターから結構飛んでいるのは、私にとって魅力なのですが、意外に料金は安くありません。

http://www.thomsonflights.com

ここはどちらかというとパック旅行の方が有名です。主に、イギリスから南の島や地中海沿岸に行く安い飛行機を運航しています。しかし、実際はそれほど安いというわけではありません。たまに、すごく安いチケットが出ています。

 他にももっとたくさんあるのですが、とりあえずは主なものだけにします。格安の航空会社だけでなく、最近はメジャーなキャリアーがかなり価格を下げています。イギリスではブリティッシュエアウェイズがそうです。かなり早く買えば、50ポンドぐらいであちこちいけるようです。また、安売り用の子会社なども作っています。ヨーロッパでの航空会社の競争は本当に熾烈で、私が9月に使ったドイツ系の会社はどうやらもうつぶれてしまったようです。イギリスでは、賃金の引き下げに抵抗する職員のストなどは大きな連休がある度ニュースで話題になりますし、実際にヒースローなどの主要空港が麻痺してしまうこともたびたびです。さらにこのようなストは、メジャーな会社の方が多く、またサービスの質もかなり低下しているようです。よって、高い飛行機に乗ったからと言って、質の高いサービスを必ずしも受けられないのもイギリスの特徴です。安い飛行機会社を利用する際はもちろんですが、イギリスではできるだけ乗り継ぎを避けるのが無難のようです。私自身、荷物が届かなかったり、トランクが壊れていたり、既にこの1年で経験済みです。