これから、いよいよ臨床試験にはいる。臨床試験は第1相(フェイズ1)から
第3相(フェイズ3)まで三段階である
第1相は、安全性のテストで、小数の健康人の希望者で行う。学生アルバイトなどを
集めて行っているクリニックも有るが、多くは製薬メーカーが自社の社員から
ボランティアを募ることが多い。社員はそれなりの報酬(アルバイト料)が支
払われるし、愛社精神のからみもあるので、ボランティアは十分に成立する。
しかし、時にやや強制的に依頼することもある。こういう場合、拒否できる社
員は少ない。一種の勤務評定につながるからである。こういった点から社会に
は、この社員を使うということに批判的な人もいる。製薬会社に勤務する人の
中には、製薬会社に勤務した以上、それぐらいのリスクにみをさらすぐらいは
社会の許容範囲のことと思う人もいるが、製薬企業の中には、こういった問題
の煩雑さを避け、最近はいわゆる臨床テストクリニックに依頼するメーカーが
増え始めている。
第2相は、少数の患者に投与して、どのような病気に使えるか、与える量、使
い方などをテストする、この患者にテストする場合、当然、患者の同意を得な
ければならないのはいうまでもない。しかし、実際には患者の同意を得ていな
い場合が多い。(この患者の同意を得る点については、次に説明する第3相に
ついても同様である。)
この点について、ある大学教授は「同意を取り付けなければならないのはその
とおりだが、正直にテストだといえば七割の患者が拒否してテストにならなく
なる」という。「それならばテストを引き受けなければいいではないか」しか
しながら、それに対する教授の答えは、「薬学は進歩しなければいけないし、
それに対する研究費もメーカーから提供されるから・・」というものであった
という。実は、ここに新薬開発の大きな問題点があるように思う。(厚生省に
よると同意の文書でとっているのは10%という)
テストを受ける患者は、本来ボランティアの精神で薬の開発に協力しようとい
う人達であるべきである。しかし、製薬会社の方は、新薬開発に会社の存亡を
かけている。
一方、臨床テストをする医師(教授や院長)は、研究費欲しさというものがあ
るのである。そこで患者への同意を求めることを省略して人体実験をすること
になる。不思議なことに、製薬会社は臨床テストの謝礼を教授らには提供する
が、患者には一文も払わないのである。しかしながら、新薬のテストで心身を
傷つけられる可能性があるのは患者なので、教授はテストするだけなのである。
教授に謝礼を出すなら、患者にもテスト料を支払うべきなのではないだろうか。
第3相は、第2相の結果を見て、多数の患者に新薬として価値があるかを計画
的にテストする。これは本来非常に重要テストであるが、現行のルールでは、
製薬会社を信用して、すべてメーカーに任せている。そのこと自体とやかくい
うべきではないのかもしれないが、日本ケミファやソリブジン(日本商事)の
ケースをみると、とても信用する気にはなれない。「それは一部のメーカーで、
多くは正しくやっている」といわれるかもしれないが、こういうことは一社で
も不正があってはならない。