私たちは「酒税は需給調整要件になり得る」と見ている。酒税を上げれば
価格も上がり、消費がある程度抑制される。需給関係を「調整」するとは言い切れ
ないが、そのバランスを変化させることは確実である。
酒税に関してもう1歩踏み込むなら、酒税は景気動向によって左右されている。
(【図1】参照のこと)これについて大蔵省酒税局は、「不況時に法人税が減収
して、直接税がダウンする
ことは必至で、間接税は好不況に関わらず安定している。このため結果として、
酒税が景気動向に左右されるような状態になるのは当然である。ただ、物価水準に
伴って増額している。税収不足の補充という意味もある」と述べている。しかし、
消費者としてこのように酒税が税収の調整役として利用されている現実を好ましいも
のとは思えない。酒税を上げたからと言って税収が順調に増えるとは限らないという
データもある。1984年にビール大瓶1本当たりの小売価格を285円から310円
へと25円も増税したときは、ビールの消費量は前年比5%も落ち込んだ。
よって、増税することにより税収を確保するよりも、減税もしくは税率を据え置いて
消費を促すことが肝要であるだろう。ただでさえ、わが国の市場には競争・消費の
自由を侵害するような規制が数多く存在する。景気回復には、消費者の積極的な
消費活動が必要である。多くの規制で市場参入を制限し、その規制をクリアして参入
したものを厚く保護する現状は正に「転ばぬ先の杖」であり、自由競争から生まれる
数々の可能性・真の競争力を育成する意志に欠けると見られても致し方ないだろう。