next up previous
Next: 逆情報自由法訴訟の多発 Up: 情報公開法施行後の課題 Previous: 文書作成者の意識の変化

行政側の金銭的時間的労力的コストの増大

対象領域がきわめて膨大であること、情報取り扱いに関する一元的法制の不存在によって、現状を的確に把握することは著しく困難である。

わが国の大抵の省庁は現在、文書の管理については、それぞれの文書管理規則ないしは規定に基づいて行っているものと思われる。つまり、これまで各省庁などで作成された情報(資料)は、行政内部の事務の適切な処理、能率的な遂行を目的としてつくられたものであり、外部(国民)からの利用や各省庁間の利用などは考えられていない。よってその性格は、まったく内部訓令的なものでしかない。しかも規則の対象が文書に限定されている結果、これ以外の各種資料類は訓令的にも拘束されていない。

また、文書の膨大化、それに伴わない保管場所の狭隘(きょうあい)化、しかも管理の分散化、これらを通じて未整理文書の増加、検索体制の不十分さなどから、文書の利用度は著しく低められ、公文書の「私物化」現象すら生じている。文書量の膨大さについて具体的数字をあげれば、文書担当課によって集中管理されている文書類は、全体の約10%にすぎないし、中央省庁1272課(1983年現在)のうちすでに60%の課で保管場所がいっぱいである。また、各省庁内部部局職員のうち約40%が「必要なときにすぐに取り出せずに困ることがある」としている。それに対して、文書資料の件名台帳等検索に必要なシステムが確立していないため必要な文書資料を捜し出すのに時間がかかることがある。担当者が不在の場合など、それは顕著であろう。従って、その資料をまとめ終わるのにどの程度の時間がかかるのか不明であり、資料は日々刻々と増えることを考えると不可能ではないか、とも思われる。

故に、情報公開法施行後、それを円滑に運用するとなると莫大な各種コストを要するだろう。金銭的コストについてアメリカの情報自由法を例にとってみれば、上院司法委員会は、はじめ情報自由法を遵守するには一年におよそ4万7000ドルの費用がかかると考えたが、それは極端な過小評価であり、「情報に関する法と政策部局」で司法次官ジョン・シェーンフィールドが査定したところによれば、直接経費だけで年間4750万ドルにのぼるとされているのである。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997