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情報が公開されない理由

見てきたとおり現在の原発に関する情報公開制度では、国民が原発の安全性 を判断するための十分な情報が公開されているとは言えない。では、なぜ国民 が本当に知りたい原発の安全性についての情報は公開されてないのだろうか。

まず第一に、現在の原子力発電に関わる政府(通産省・科学技術庁)・電力 会社・電力中央研究所の相互の複雑な関わり合いが一つの要因として挙 げられる。電力会社は原発建設の要請を政府に提出し、政府が許可するのだが、 この電力会社と政府との要請・許可の関係は、電力会社がより容易に許可を得 るための政府の天下りを起こりやすくしている。つまり、政府から電力会社へ 天下りするという関係が、電力会社の利益を優先させ、電力会社にとって不利 になる情報が公開されなくなるという状況につながっている。

また電力中央研究所は原発を作る際の調査機関だ。その調査を依頼してくる のは政府であり、電力中央研究所が調査結果を政府に報告するという関係にあ る。調査機関であるから本来公正な調査、報告を行うことが期待されるのだが、 電力中央研究所は電力会社から出向してきた人々により構成されているため、 原発建設を行う電力会社にとって不利益となる調査結果を政府に報告しなくな る状況が生じている。

ここまで見てくると明らかだが、政府(通産省・科学技術庁)・電力会社・電 力中央研究所の相互関係は、天下りや出向という関わり合いにより、癒着関係 にあると批判されても仕方のないものだと言える。そして、このような関係が、 積極的な情報公開を阻み、結果として本当に知りたい原発の安全性についての 情報が公開されないという状況をうんでいる。

不十分な情報しか公開されていない理由として第二に挙げられるのは、企業秘 密という非公開事由だ。現在、原子力情報に関して非公開にされている理由で 最も多いのが企業秘密という理由である。先の項で書いたようにプルトニウム 輸送時の容器の材質や耐熱性についての情報が非公開にされたのも企業秘密と いう理由からであった。確かに企業にとって企業秘密は大切であり尊重されね ばならない。しかし、原発の問題に限らず情報公開全般においてよく言われる ことは、この種の非公開事由は、予めよほど限定しておかないと非公開事由が 政府によって拡大解釈され、情報公開の隠れ簑として利用されるといることだ。 つまり情報公開制度が非公開事由の拡大解釈によって国家機密制度に早変わり してしまうというのだ。殊に原発に関する情報は政府や電力会社等の癒着関係 の存在があるため、本来公開しても差し支えない情報まで大幅に非公開にされ ているのではないかという疑いを抱く。

第三に核拡散または核ジャックの危険があるという理由で非公開にされること だ。確かに原子力情報をすべて公開してしまうことは危険だ。核兵器を保有し たいと思っている国に核取扱いの知識を与える危険性も否定できないし、核輸 送ルートを安易に公開すると核輸送中に核ジャックされる危険性もあろう。し かしこれも政府と電力会社等の癒着関係の存在があるため、拡大解釈されてい るのではないかという疑念が残る。

以上、考察してきたことから、国民が原発の安全性を判断できるに足るような 情報が公開されていない理由として、三つのことが挙げられた。第一に、政府 (通産省・科学技術庁)・電力会社・電力中央研究所の癒着関係により、相互 の不利益な状況につながるような情報が非公開とされていること。第二に、拡 大解釈されがちな企業秘密という非公開事由の存在。第三に、同じく拡大解釈 されがちな核ジャックという非公開事由の存在。この三つの理由のためになか なか公開が進まないのだ。 

そこで我々はこのような癒着構造を打破、または打破できないまでも情報が十 分公開されていない現状を変えるシステムを考案することにした。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997