我々は調査によって政府(通産省・科学技術庁)・電力会社・電力中央研究所 に癒着関係が存在していることがわかった。本来なら電力会社と一定の距離を おき公正な審査機関として機能すべき政府が電力会社とがっちり手を握り原発 を推進しようとしている。いわば全員がプレーヤーで冷静な審判が存在しない ゲームのようなものだ。このような現状では電力会社と政府の相互に不利益な 状況につながるような情報は内輪の判断だけで非公開とされしまう可能性があ る。
現在では、政府に原子力情報の公開を求めても公開してもらえなかった場合に それを救済してくれるオンブズマン的機関は存在しない。そのため情報非公開 が明らかに非公開事由の拡大解釈と思われても国民は不満や苦情をぶつける所 がなく、泣き寝入りするしかないという状態にある。
そこで、そのような国民の不満や苦情を受けつけ、国民の代わりに再度より強 い権限をもって政府に情報の公開を請求する機関を新たに作ることを我々は提 案する。我々はこの機関を政府と国民の間をとりもち、どこからも圧力を受け ない独立した機関という意味で第三者機関と呼ぶことにする。
この第三者機関は、国民から、政府の公開/非公開の決定に対する不満を受け 付けて、その情報が非公開事由に当たるかどうかを審査し、当たらない場合は 公開するよう政府に勧告する。そして政府はその勧告に対して何らかのリアク ションを取らなければならないようにする。例えば、第三者機関が政府の最初 の非公開の決定を、妥当でないと判断したとき、政府はなぜ非公開とするのか という理由を、必ず第三者機関に提示しなければならない。もしくは、その勧 告を受けてもう一度討議を行って、その情報を公開するかの選択をしなければ ならない。
また審査する際には、第三者機関はその件に関する全ての情報を持つものとす る。このことに関しては、第三者機関に情報を全て持たせてしまうことの危険 性を指摘する意見もあったが、全ての情報を持たなければ、到底その情報に関 する判断は下せないだろうと考え、あえて第三者機関に全ての情報を持たせる ことにした。
このような第三者機関の働きによって、政府が最終的に公開か非公開かを決め た時点で、国民の不満は解消されるはずだ。なぜなら、最終的に政府が非公開 に徹しても、第三者機関との討議を経ているので、非公開が妥当な理由を持つ ことが分かり、また、政府が公開を決めた場合には、国民は当然、情報を持つ ことができるからだ。さらに、第三者機関と政府とのやりとりを、マスコミな どを通じて報道することが望まれる。しかしこの際には、情報の内容自体をマ スコミに伝えることはできない。なぜなら、そうしてしまうと、公開か非公開 かが決定していない情報が、決定前に公開されてしまうことになるからだ。し たがって、マスコミは、第三者機関と政府との間のやりとりの様子を中心に報 道することになる。だがそれだけでも、第三者機関がきちんと国民の苦情を受 けたか、また政府がちゃんと第三者機関に対応しているかということが明らか になり、国民は結論へ至る過程を監視できるようになるだろう。
現在、原子力情報に関しては電力会社と政府の内輪だけでそれぞれの情報の公 開、非公開が決められている。これが、国民の非公開事由の拡大解釈ではない かという不満を呼び、さらには原発の安全性に対する漠然とした不安の原因と なっている。
しかし、 このように情報の公開、非公開を決める際に、政府の独断では なく国民の意見をくみ入れて、目に見える形で議論を行いながら決定を下すこ とによって国民の不満や不安を解消することができる。