イギリスやオーストラリアでは、シニアを対象とした生涯学習機関に「U3A」があります。「U3A」は、「University of the Third Age」の略で「第三世代の大学」といわれるものです。大学で行われる学術的なプログラムを、シニアの生活向上に役立たせる為に、1972年にフランスのトゥールーズで設立されました。元気で活発なシニア達のために組織された学習コミュニティです。会員自らの総意に基づく自治の精神に運営されています。楽しみながら学び、お互いが助け合い、全ての人が参加する事ができます。

 訪問したオーストラリア・ゴールドコーストの「U3A」では国立大学Griffith Universityとも連携し、受講者はその大学で開講されている授業にも出席できるようになっていました。大学がシニアの為の生涯学習を奨励し門戸を開いているのです。訪問した当日は、「U3A]の第一回目の講義でした。受講生の中には車椅子の通学者がいました。教室のあるキャンパス内にも車で来られ、そのまま教室に入り、夫婦で仲良く受講していました。

 開講されている授業は多種多様な内容になっています。開講場所により「数学」「ジグゾーパズル」など思考を必要とする講座、さらには「音楽鑑賞」「美術鑑賞」から、「哲学」や「文化人類学」「心理学」「人間の思考の歴史」「博物館研究」「国際問題」に至るまで、アカデミックな内容のものも多くみられます。また、趣味や技術の習得、旅行なども含まれています。

 1年半前に退職者ビザで移住を決めた河村 哲夫氏(71歳)は、自宅から車で5分くらいの所にある小学校内の「U3A」で「フランス語」を学んでいます。そのフランス語を学んでいる受講生の一人に、現在コンピュータを教えているアイリーン・ダンクリーさんがいます。公立小学校の校庭の一角に「U3A」専用に提供された別棟があり、PCの初級から実習まで様々な講義を行っていました。

 「コンピュータ」をはじめ、「日本語」や「フランス語」など語学関係も多く開講していました。会員自ら講座を企画し、講師を探し、自分たちの力と力量で会を運営しています。講座の講師もボランティアで、報酬はありません。ある講座の先生も、別の講座では、生徒であるということも起こります。会はメンバーの一人一人がわずかな会費を納入し、その資金で運営されています。一人一人の知的欲求を充たすために、自らの資金と自らの力で運営するという「自治の精神」でおこなわれています。

U3A(Gold Coast) 第1回コンピュータ講座の受講者によるアンケート結果
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 今回、それぞれの組織への訪問は、調査の趣旨を理解していただいた河村氏のご協力によりスムースに進める事ができました。また、オーストラリアに関するページはボランティアとして翻訳の協力をお願い致しました。大変感謝を致し御礼を申し上げます。