(南部・高雄の観光名所、六合夜市にて。パパイヤミルクの屋台に国民党の政治家の「サイン」が書かれている。ホンモノ?)
1月8日から12日にかけて、総統選挙と立法委員選挙を見るために台湾に伺いました。4年前とはまた違う印象を持つ選挙でした。備忘録を残していきたいと思います。
(以下の文章は、ひょんなことから台湾と長くお付き合いすることになった日本政治史研究者の見聞録です。台湾政治の専門家ではない筆者が、ごく雑駁な印象をメモとして記したものです。ご了承ください)。
(4年前の投票日前日、総督府前で行われた民進党の選挙集会のようす)
4年前、2016年1月16日の夜。台湾総統府前の広場は、降り続ける冷雨をものともせず、それを跳ね返すかのような熱気で溢れていた。「点亮台湾、就是明天」。明日の投票で台湾を明るくすることができる。民進党の投票日前の最終キャンペーンは、勝利を確信したように盛り上がっていた。「国民は政治に関心がない」と言われる日本の政治研究者からすると、なんとも羨ましく、複雑な思いを持つ光景だった。
あれから4年。台湾をめぐる国際環境は大きく変わり、国内政治においても、日本でも注目されたLGBT政策や地方創生政策など、耳目を惹く政策が進められた。他方、それへの反発も大きく、2018年の地方選挙で民進党は大敗した。その後、中国側の強気な発言や香港情勢の影響によって蔡英文は支持を取り戻し、選挙戦でも優位が伝えられていた。実際はどうなのか。特に地方からの視点を見てみたいと思い、台湾に向かった。
(台湾鉄道高雄駅。日本統治時代の城郭型駅舎を残しつつ、開発が進められている)
初日は南部の中心地・高雄を訪ねた。歴史的に南部は民進党の地盤と言われており、その中心である高雄市でも20年にわたって民進党候補が市長に当選してきた。しかし、一昨年の市長選挙では国民党が勝利し、まさに当の市長である韓国瑜氏が現職のまま総統候補となった。
まず聞いて回ったのは、なぜ一昨年の選挙で国民党が、韓国瑜が勝利したかということであった。共通して語られたのは、民進党市政府20年の積弊、とりわけインフラ整備の問題であった。選挙から3か月前の2018年8月に起こった南部豪雨で死傷者が出たことは大きく影響したという。また、中国との関係悪化による観光客の減少、農作物輸出の低迷、サイエンスパーク指定の遅れなどへの批判も聞かれた。
(韓国瑜候補の応援グッズを販売する露店。こうした店が4軒あった)
観光名所となっている六合観光夜市では、1/3ほどの屋台に国民党の旗が上がり、韓国瑜候補をキャラクター化したグッズが売られていた。ここでは民進党の旗は全く見なかった。大陸からと思しき観光客には合わず、意外にも韓国からの旅行客が目立った。そういえば、宿泊先のホテルにあった客室案内も、繁体字中国語、英語、簡体字中国語、韓国語だった。
年300万人来ていた中国大陸からの観光客が来なくなった、主要産業である農産品の輸出が減っているという意見は、若い方々からも聞かれた。高雄市では台南市とともに前回に続いて全ての小選挙区で民進党候補が議席を独占する結果となったが、経済への不安の声は大きいように思われた。
(見聞録(2)台中へ続く)
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