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問題ある都の情報公開制度

都の現行の情報公開制度は、まったく役に立ってないとはいえないが、使いやすいとはとてもいえないだろう。1章にもあったように、とても一般都民向けの情報公開制度であるとはいえない。実用的でないのである。

では、いったいどのように改善したらいいのだろうか。

もっとも手っ取り早いのは、問題点をなくし、その部分をより良いものとすることである。というわけで、まず問題点を挙げてみたいと思う。

第1に、パンフレットといういわゆる非常に初歩的な資料でさえ、1カ所にまとめて置いておらず、たいへん不便であるということである。このことは、物理的に離れているということで、移動等で大変疲れるということとともに、情報を短時間で集められないということにつながる。それでは資料をもらいに来る意欲が薄れるというものである。つまり、第1の問題点としては、「情報が分散している」ということが挙げられる。

第2に、その得られた資料がパンフレットだけだったということである。つまり、情報がパンフレットからしか得られなかったということである。パンフレットというものは、発行する側にとって都合の良いものである。なぜなら、発行する側に都合の良い情報だけ載せたとしても、読む側はわからない可能性が高いからである。たしかに、データや情報を改竄したら犯罪だろうが、載せなかっただけでは罪に問われないだろう。こうやって考えてみると、意地の悪い考え方をすれば、都は自分にとって都合の良い情報しか公開していない可能性もあるのである。

第3に、情報公開ルームに行っても、文書を公開してもらうことができなかったということが挙げられる。たしかに、都の職員に言わせれば、文書名がわからない方が悪い、ということになるのかもしれない。だが、文書名がわからないような人が来ても、そういった文書の情報が得られるというのが、本当の情報公開制度というものではないだろうか。そうでなかったら、「臨海副都心計画について知りたい」といった素朴な疑問を持った一般都民が都庁にやってきたとしても、パンフレットをもらうことしかできないことになってしまう。そもそも、そういう計画を詳しく知らないから情報を求めに来るのであって、そういう人が文書名を知っているわけがないのである。逆にいえば、知ってるようなプロでなければ、情報の公開がなされないような制度であるといえる。つまり、「現行の情報公開制度は、一般都民にとって実用的ではない」という問題点が挙げられるのである。

そして最後の問題点は、仮に開示してもらいたい文書名がわかっていたとしても、その文書が開示・非開示が決定されていないものだった場合、その決定に10日もの月日がかかることである。ちなみに、開示・非開示が決定されている文書というものは、あまりない。つまり、具体的にいえば、何らかの名前のわかっている文書を見たい場合、まず開示請求を行いに都庁へ行き、それから10日後に開示が決定された旨を知らされたら、再びその開示された文書を見るために都庁に行かなくてはならないのである。もちろん、10日後に非開示を通告されるかもしれない。だが、開示してもらえるかどうかに10日もかかるような制度では、とても情報の自由な閲覧のできる制度であるとはいえないだろう。ようするに、この最後の問題点は、「開示・非開示の決定に時間がかかる」ということである。

さて、以上4つの問題点を整理すると、次のようになる。

  (1) 情報が分散している

  (2) 与える側に都合のよい情報しか公開されてない可能性がある

  (3) 一般都民にとって実用的ではない

  (4) 開示・非開示の決定に時間がかかる



Atsushi Kusano
Sat May 10 18:41:20 JST 1997