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地ビールとは、大手のビールメーカーのビールではなく、中小企業によるもの、自治
体による地域に密着したものなど、基本的にそこでしか飲めないような個性的なビー
ルのことを言う。
94年にビールの最低醸造量が2000Klから60Klに引き下げられたのを受け
て、自治体、外食チェーン、テーマパークなど様々な分野が地ビール製造にのりだし
た。
大手のビール会社は4社とも技術指導、原材料提供、醸造プラントのあっせん、併設
するレストランの運営ノウハウ提供などの分野において各自治体に協力している。地
方自治体にとっては地ビールを、地酒のように「町興し」に利用したい意向だが、製
造ノウハウがないので、それら大手ビール会社の協力を得て行っている。
しかし平成7年6月18日現在、実際に地ビール醸造の免許を取得したのはわずか1
4件にすぎない。例を挙げておくと
- 上原酒造(越後ビール)
- 隅田川ブルーイング
- 三田屋
- オホーツクビール など
なぜ少ないかというと、規模の小さい地ビール醸造には設備の購入、原料費、労務
費、光熱費のコストが重く、最終的に瓶詰めした状態に至るまで大手会社のビール
の2倍近い価格となる。従って地ビールを飲む層と頻度は限られてくる。もう1つの
原因は後述する免許取得の壁である。地ビールを生産するには各地域の税務署から製
造免許の交付を受けなければならないが、その際、収支見通し、原料確保、資金調達
の方法、品質、衛生面などにおいて厳しいチェックを受ける。まだ地ビール市場がし
っかりと確立していない日本においては様々な企業の参入、撤退が予想されるが、税
金を徴収する側の国税庁としては、倒産だけは最もさけたいからである。以上の理由
で、地ビールが大手メーカーを脅かすような高いシェアをとることは困難であろう。
地ビール産業側のコメントでは「最終的には100近い地ビールが登場し、全体で1
% 近いシェアを占める」と予測している一方、ある大手ビール会社は「日本のビール
の消費量はおよそ年間70万Klで、かりに地ビールがこのうち1% のシェアをとる
としたら70000Klになるが、1つのマイクロブルワリーで100kl製造する
とした場合、これは700店舗分になる(中小企業に対する)税制の優遇措置があり
、マイクロブルワリーの発展しているアメリカでさえその数は約400店であり、1
% のシェアをとるのはほとんど不可能か、かなり先のことになるだろう。」
としている。
Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997