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まとめ

まず最初に、このような『おとり捜査』的な調査を行なったことに対して陳謝 し、ほとんどの官庁での学生達への丁寧な応対に対して、職員の方々に深く感 謝する次第である。大学1年生と言うこともあり、ほとんどの学生が霞ヶ関に 出かけるなど生まれて初めてであろう。訪問時にはこちらからも注意を与えた が、失礼にあたることもあったかも知れない。まったく頭が下がるというより 他はない。

ただ、陳謝すると同時に、この調査はこのような素人の学生が『一般国民とし て』訪問し、制度の実態を知ることに意義があったと信じている。

何故なら、制度の存在すら知らない学生たち、しかもその大部分が1年生であ るということを考えると、彼らは十分『一般国民』の資格を得ていると考える。 しかも、彼らは政治の授業を履修するくらいなのであるから、少なくとも一般 の人たちよりは政治に対する関心も高いと思われる。

政府は最近、審議会の議事録などを原則完全公開にするなどの情報公開をよう やく進め始めた。しかし、今回学生が利用した文書閲覧窓口制度をとってみて も、その内容、開示方法(これだけでもう堅苦しい)果たして国民が理解し、 活用できるだけのものだろうか。

さらに、今回、学生諸君が体験した官庁の対応の数々は、(大体の場合、丁寧 ではあったが)一貫した対応とはいえず、はっきり言って各部署での個人裁量 に任されているのが実態である。このことは、官庁側が公開したくない文書に ついてはたとえ公開となっていてもしない、できないとつっぱねられる可能性 を秘めていることにお気づきだろうか。

結論でも言ったように、私達が注目するポイントは窓口が整備されているか否 かである。大方の場合、窓口がきちんと整理されていて、担当者も決まってい る場合、円滑に公開が行なわれ、(もっとも短かったところは15分程度で訪 問を終えている)学生の好感度も高い。しかしいくつかの省庁では、忙しさも あろうが窓口が整備されているとはいえず、中には窓口が存在すらしていない 部署もある。これはどういうことだろうか。

省庁内ですら窓口が機能していないところがある(省庁内での文書の把握がで きていない事例が多数見受けられる)のも問題である。システムとして、情報 公開窓口の係員がすべて引き受けるところ、その文書を扱う部署の人が直接案 内するところに大別されるようだ。この辺りは文書を入手するまでの時間(何 時間もかかったところや、10分ですんだところなどまちまち)にも影響を与 えていると思われる。 →担当者の忙しさ、事務の方の知識不足

筆者の父親も官僚をやっているために、官庁での殺人的な忙しさは普通の人た ちよりも分かっているつもりである。本当は官僚の方々の忙しさを考えると、 電話でアポイントを取るべきなのかもしれない。(閲覧方法(前述)を読むと、 電話しろといっているようにも取れる)

しかし、国民が情報を公開して欲しい場合、大抵の人は官僚の忙しさを理解す ることなどない。今回の調査のように、突然窓口にやってくることになるはず である。そこで、『電話がない』『アポイントを取れ』といわれて怒られたら、 これは官僚に対して敵意を抱くことは避けられない。もちろんそのような事前 の準備が必要な理由も分かるが、それは官僚側の都合に過ぎない。

ここで道ゆく人に突然質問したとしよう。「あなたは官僚を信頼していますか??」 と。確かに仕事の面では世界でも最高の種類に属するとしても、それ以外では どうだろうか。公務員は実はサービス産業に区分されることを忘れてはいけな い。国鉄がJRになり、サービスが良くなったと話題になったが、官僚にもある 種の営業努力が必要である。その中でもPR活動とならんで即実行できる部類に 属するのが、この窓口制度ではないだろうか。他人の信頼度を上げたいと思っ たならば、まず自分の家のドアを開けておかなければならない。官僚への信頼 は現在お世辞にもあるとはいえない。

情報公開をすることで、規制の多さにたまげたりするとか行政への理解を深める といった結構良く思いつくメリットの他にも、情報公開が行政へのチェック機 能を間接的に保証しているという重大な役割があることを忘れてはいけない。

この項を読んだ学生諸君はいろいろな学生の感想や悪戦苦闘の数々に触れ、各 省庁、そして各部署により『当たり』と『ハズレ』があったことに気付くと思 う。その違いから、その官庁の色や、忙しさ、国民との関わりを、またこの制 度が各省庁の現場裁量に依存している限り破れないある種の限界というものを 感じとってくれれば、筆者が言いたいことは分かりやすいと思う。

最後にこの調査を実際に行なってくれた現代政治履修者の諸君に深く感謝して、 拙稿を終らせていただく。

付録1:以下に今回の調査の集計結果の表を添付する。
項目は

  1. この制度を受付の人が知っていたか
  2. 受付での応対は丁寧か
  3. 担当者の応対は丁寧か
  4. こちらの身分を聞かれたか
  5. 資料を何に使うのか聞かれたか
  6. 資料のコピーを取らせてくれたか
  7. 閲覧者名簿に記入を求められたか
  8. 公開に条件はついていたか
の8つである。


Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997