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巻末言


あとがき


草野厚


規制緩和、行政改革を理解することは若い学生諸君にとっては至難のわざで はなかったかと思う。一般の人々にとり、この問題がなじみにくいものである ことを考えれば、尚更のことである。1994年の春からスタートした端末の 切り売り開始によって、爆発的に携帯電話は普及した。また95年の4月から、 スーパー、デパートなど大型店の閉店時間の繰り下げ、休日日数の削減が実施 された。いずれも規制緩和の結果だが、ほとんどの人々は、事実は知っていて もそれが規制緩和により可能となったことに気づいていない。
加えて、規制や行政の複雑な仕組みに直面する企業や業界は、それぞれの関心 事が解決されれば、他の業界に如何なる障壁があろうとも関知しないといった 傾向があり、そのことが規制緩和、行政改革の進捗を困難にさせている。ヤマ ト運輸やライフストア、京都のMKタクシーが規制緩和の先頭に立ったことは よく知られているが、業界横断的に統一行動をとったという話は聞いたことが ない。
規制緩和ですらこのような状況だから、行革はさらに理解しにくい。国営企業 の民営化は別にすれば、官庁が統合されればどのような効果があるのかなどお そらくだれもが首をひねるのではないだろうか。
こうした理由から今回のグループワークでは、情報公開を含め、三つの分野で 実証研究を行った。とりわけ各グループの共通作業であった各官庁の文書閲覧 窓口を利用した情報開示請求は、極めて興味深いものであった。この成果は一 足先に、拙著「日本の論争」(東洋経済新報社、1995年)に所収してある。 一連のグループワークを通じて、学生諸君はそれぞれの分野に関するエキスパー トになったはずであり、これを機会にさらに研鑽を積んで欲しい。
最後になったが学生たちのプレゼンテーションを熱心にお聞きいただき、貴重 なコメントを頂いた行政改革委員会事務局長、田中一昭氏、行政改革委員会委 員であり、評論家の大宅映子氏、行革国民会議事務局長並河志乃氏に改めて感 謝申し上げたい。

('96.6.21 記)