1994年6月、日本の新しい原子力計画が発表された。その中心はプルト ニウム計画で、高速増殖炉の実用化を2030年頃としている。これは前回の 長期計画にくらべると、諸計画をまるまる10年遅らせている。 各国に目を 転じると、まずアメリカは核拡散を恐れ、実験段階で早々と手を引いている。 イギリスは、経済的見込みのなさが決定的要因となり(最近のウラン価格の暴 落などのため)、94年4月で高速増殖炉を停止し、計画をとめた。この分野で世 界をリードしてきたフランスも、プルトニウム増殖の不必要性と運転技術上の 不安から、実用化をあきらめ、研究炉だけを残すことに決めた。またロシアは、 大規模な計画を立てているが、それを進めるだけの経済的体制が整っていない。
このようにプルトニウム計画を維持しているのは事実上日本だけであり、突 出している感は否めない。「あかつき丸」や「もんじゅ」の臨界が大きな関心 を呼んだのもそのためだといえる。 プルトニウムだけではない。通常の原発 に関しても、スエーデンが2005年までに全廃することを決めたのをはじめ、 多くの国が原子力発電を抑制する方向へ向かいつつある。 いまや人々の間で 原子力に対する期待感は薄れ、世界各国で脱原発への動きが盛んになっている。 そのような中で原子力開発を積極的に進めようとする日本政府そして原子力委 員会は、開発の必要性を、すぐに修正を迫られるような小手先のエネルギーの 数字などで示すのではなく、しっかりとした未来の社会像を提示して理解を求 めていく必要があるだろう。