1994年11月8日に行われたアメリカ中間選挙では、連邦議会の上院100議席のう ち約3分の1の35議席、下院は435全議席が改選、またニューヨーク、カリフォ ルニアなど36州の知事選も同時に実施された.この中間選挙は、上下両院で40 年ぶりに共和党が多数を制するというまさに歴史的な結末となった.共和党が 上下両院、知事選挙の「ハットトリック(三重の勝利)」を達成、これに対し民 主党は地滑り的惨敗を喫した.
民主党劣勢の最大の原因はクリントン大統領の人気のなさにある.大統領の支 持率は10月上旬、44%と9月下旬に比べ2ポイント上昇した(タイム・CNN共同調 査)ものの、7月以来、不支持率が支持率を上回る状態が続いていた.加えてク リントン大統領は「変革」を訴えて当選してきただけに、医療保険制度改革法 案審議の行き詰まりなど内政問題に関する政治手腕への国民の失望感も大きかっ た.
大統領のもう1つの公約「米国経済の再建」については、確かに財政赤字はク リントン政権になってピーク時から3割も削減され、一時は7.7%もあった失業 率は10月に5.8%とこの4年間で最低水準まで下がった.しかし貧困層は4年連続 して拡大し、また貧富の差はかえって広がっていると感じている国民が多く、 このことがクリントン大統領に対する不信の最大の理由とみられる。
このように民主党の政策に対する不満が今回の選挙において、クリントン大統 領に対して不信任状をつきつけるかたちとなって現われたが、より重要なこと は、国民が政府と議会の不毛な党利党略政治を嫌った、つまり共和党に民主党 と違った魅力を感じたのではなく、「反ワシントン」の風潮が非常に強かった ということである.この風潮は共和党に投票した人の97%が「クリントン大統 領に反対の意思を示すため」と答えていることから容易にうかがうことができ る.民主党現職が36人も落選する一方、共和党現職は全員当選していることか ら、「反現職ではなく、反クリントンそのもの」との見方もあるが、現職候補 の得票率が62.8%の低率だったことを考慮すると、現職議員への逆風が吹いた ことは間違いないと考えられる。