これまで、2期目の政権が掲げる内政、外交政策をふまえた政策的視点と政治 的視点から閣僚人事の背景を探ってきたが、最終的には議会との駆け引きや世 論を重んじる大統領の姿勢が反映して、新たな政策を語る大物よりも政治の機 微を知る能吏を今期の閣僚人事に重用したと言える。
内政においては財政均衡を中心に据えた超党派体制で政権2期目の乗り切りを 目指すクリントン大統領の施政方針が議会共和党へ配慮した閣僚人事を生み出 す結果となった。外交においては国家安全保障政策を担う面々は新チームといっ てもオルブライト氏はこれまでもホワイトハウスで国家安全保障会議に出席し ており、新顔はコーエン氏のみとなっているし、また気心の知れたタルボット 国務副長官を留任させるなど、チーム一新より、外交の継続性の維持に傾いた人 事が目立っている。また共和党上院議員であったコーエン氏が国防長官に就任 し、ケネディ大統領が共和党員二人を閣僚に起用して以来の超党派閣僚人事で あったことも注目すべきだろう。
このように第2期クリントン政権は、政策的観点からも政治的観点からも中道派 人事であると言え、大胆な政策提案を予想させる布陣より、チームプレーや大 物より能吏を重要視、女性や少数民族に配慮するバランス人事であると言える。