国内の再重要政策課題として財政均衡をあげている流れに沿い、クリントンは、 「2期目の経済チームはルービン財務長官がキャプテンとして率いる。」と言 明し、1期目からの留任閣僚となるルービン氏に大きな信頼を寄せている。ロ バート・ルービン氏は、ウォール街出身の市場重視派であり、政治的には今期 のクリントン・チームの路線に沿った中道派である。彼は、『強いドルはアメ リカの国益』と繰り返し述べており、1期目に続いてクリントン政権が引き続 き「強いドル」を維持する政策を採ることを示唆し、2期目の経済政策チーム の中心的な役割を果たすといえる。
更にここで述べておきたいことは財務長官の職務の中には、国内政策だけでは なく、外交政策に深く関わることである。そのひとつとして、先週4月7日、ルー ビン財務長官はハノイを訪れ、旧南ベトナム時代の対米債務の返還協定に調印 し、1995年の国交樹立以来停滞していた両国の経済関係の拡大に意欲を示して いる。彼は、調印について「両国関係の正常化の重要な一歩であり、ベトナム を国際経済に組み入れるもの」とし、「ベトナムが過去の約束を尊重すること の重要性を認識した。」と評価している。
このように外交政策と共に何より、2期目の経済政策を担う人物としてルービ ン財務長官が登用されたと言え、クリントン政権にとって様々な意味で重要な 役割を果たすことになろう。
第一に政府の重要課題として掲げた「財政均衡」、つまり財政赤字ゼロ、とい う政策を推進するにあたっての中心的な役割、
第2に、世界最強の経済力を取り戻したアメリカが、国際経済の成長と調整を 担っていくうえで、国際社会全体を視野に入れた政策を展開する必要が生じ、 その中枢としての指導力を発揮していかねばならない立場。
最後につけ加えるとすれば、クリントン政権と「議会」とのパイプ役という役 割であろう。大統領首席補佐官の人事交代によって、新政権は議会とのつなが りが薄くなった。そこで、議会に受けがよいと言われるルービン財務長官がそ の穴をどこまで埋められるかが、2期目のクリントン政権と議会との協調を実 現するための鍵となるだろう。