自己変革能力のある社会システムへの道標(抜粋)#2
2009.10.27 Tuesday 10:43
井庭 崇
しかしそのもう一つの選択肢である発言オプションも、現在の日本では行使することが困難である。なぜなら、社会や組織に対して発言オプションを行使するための 仕組みがほとんど存在しないからである。これは、日本社会の同質性や調和の信念、そして経済成長という共通の方向性が長期にわたり続いたことから、発言オプションの行使の仕組みを整備することを怠ってきたことに起因している。
社会が自己変革するためには退出オプションと発言オプションの行使が不可欠であるが、日本社会はこれらのオプションの不完全性によって、自己変革能力が備わっ てないといえる。そこで、社会の自己変革能力を機能せさるためには、発言オプションを可能にする社会装置と、退出オプションが正当に機能するための社会的多様性を生み出す仕組みを実現しなければならない。その実現にあたり、同時に考慮すべき問題がある。それが社会変革オプションを行使する、社会の構成員が陥っている無気力の病についてである。
注[2] ハーシュマン,『組織社会の論理構造』,ミネルヴァ書房,1975
(邦訳では"voice"を「告発」としているが、本論では、邦訳者の三浦隆之も訳注で代替案として提示している「発言」の訳語を採用する。)
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