自己変革能力のある社会システムへの道標(抜粋)#3
2009.10.28 Wednesday 22:08
井庭 崇
次に私が強調したいのは、ポリシー・インキュベーターという役割の強化である。 ポリシー・インキュベーターとは、社会や組織の政策をインキュベート(孵化)させ る役割の組織・人を指している。ポリシー・インキュベーターは、ボイス・アブソー バーの情報をもとにボイスを実際の政策提言や組織づくりに活かす役割を担う。具体的な主体は、政治家、官僚、経営者、研究機関、学者、マスコミなどが考えられる。 様々な人々が提案した一貫性のないアイディアの山を参考にして、一貫性のある政策 に加工するのである。このポリシー・インキュベーターを機能させるために、優れた政策集団の育成や教育改革などが早急に必要であるといえる。
ここで、創造性を引き出すためのプロセスを考慮に入れて、ボイス・アブソーバ ーとポリシー・インキュベーターの位置づけについて考えてみたい。創造性(クリエ イティビティ)とは、関係ないものを結び付け、それに意味付けができることといえ る。創造的な思考プロセスは、発散思考段階と収束思考段階に分けて考えることができる [8]。
発散思考段階は、自由な発想で断片的なアイディアを多く持ちより、多様性を生 み出す段階である。一方、収束思考段階は、一見関係ないように見える断片どうしを をつなぎ合わせ、その意味や有効性を考える段階である。一人の人間が行なう場合には、なかなかこの奇抜な結び付けや意味付けに気づきにくいが、複数人で行なう場合には、異なる視点や世界観が有効に働く。発散段階で知識を共有したりアイディアを 出し合い、収束思考段階ではそれらを元に最終的なコンセンサスを生み出すのである。 特に、複数の人間が発散段階に参加した場合には、ちょっとしたアイディアが共鳴反応を引き起こし、他の人の発想に刺激を与えることになる。そしてその人の発言が、 さらにまた他の人の刺激になる、というコラボレーションにおける共鳴効果が期待できるのである。
[7] << [9] >>
-
-
<< 自己変革能力のある社会システムへの道標(抜粋)#2
「論点:国の未来像、総参加で創造」(1999) >>
[0] [top]