The Sense of Wonder

2010.08.16 Monday 00:08
井庭 崇


昨年は、僕の人生にとって、とても重要な1年であった。

それは、世界のトップレベルの大学/研究所で研究する機会を得たからではなく、自分のかなり深いところに封じ込めていた“感覚”を取り戻すことができたからだ。


アメリカで、自由に好きなことを好きなだけできる、という状況で、僕が選んだのは、自然における自己組織化や自生的な秩序形成というテーマであった。

もともとやる予定でいた「インターネット上のオープンなコラボレーションの研究」は、早々に切り上げ、秩序の研究に没頭した。

実はこれは、「転向」というよりは、十数年前に僕の研究の出発点になった「複雑系」の研究への原点回帰、というのに近い。

十数年前には、複雑系研究としての自分のオリジナルな研究内容がなかったが、昨年は幸いにも、カオスのなかに潜む美しい秩序を発見し、その不思議さと美しさに魅了されながら、研究を進めることになった。


このような研究活動と同時に、生活面でも、ニューイングランド地方の豊かな四季や、アメリカ東海岸のいくつかの町を体験した。そして、自然の美しさや素晴らしさに感動する日々だった。

そういう生活のなかで、おそらく僕が取り戻すことができたもの、そしてそれ以降僕の核になっているもの ――― それが、"the sense of wonder"(センス・オブ・ワンダー)だ。


"the sense of wonder"といえば、それがタイトルになった素敵な本がある。有名なのでご存知の方も多いと思うが、レイチェル・カーソンの『The Sense of Wonder』(邦題:センス・オブ・ワンダー)である。

このとても薄い本には、子どもとともに自然を探検して、「知る」のではなく「感じる」こと、そして、そのなかで「神秘さや不思議さに目を見はる感性」(=センス・オブ・ワンダー)を磨くことの素晴らしさが、彼女自身の経験をベースに書かれている。

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