ある一人の研究者の転換点をめぐるメモワール
2013.02.14 Thursday 07:08
井庭 崇
いまから振り返ると、2008年から2010年あたりの僕には、研究における大きな変化があった。
そのあたりの経緯については、あまり語ったことがなかったので、ここで覚え書きとしてまとめておくことにしたい。
2008年は僕にとって、まず最初の特別な年だった。2009年度の僕のサバティカル(研究休暇)に向け、研究会の新規募集を止めた。そのときいた1〜3年生のメンバーは、翌年僕がいない1年間を過ごすことになるので、僕がいるうちに伝えられること・一緒にできることをすべてやろうと思った。
そうして2008年は、僕も自分の個室ではなく、学生が集う共同研究室に常駐するようにした(いまの井庭研のスタイル)。何もなくても、学生と同様に、共同研究室でひとり作業をすることも。なんでもないやりとりも含めた密接な立ち位置。
2008年は、学習パターン(ラーニング・パターン)を制作した年。春から学生たちが取り組んでいたが、なかなか難航していたので、夏から僕も本格参戦した。メンバーはみんな自分の個人研究を抱えながら、それとは別の活動として学習パターンの制作に取り組んだ。今から考えると相当すごいこと。
これが僕にとって、初めての本格的なパターン・ランゲージの制作経験となった。それまで博士論文で、シミュレーションための「モデル・パターン」というのを書いていたが、学習パターンは本格度とつくり方がまったく違った。僕がパターンについて語ることは、このときにつくりながら学んだことが多い。
このころ、僕や井庭研にとってパターン・ランゲージは研究・実践のひとつでしかなく、井庭研の主力はネットワーク分析や「カオスの足あと」などの研究であった。ネットワーク科学国際学会でバラバシ教授に初めて話しかけ、自分たちの研究(楽天ブックスのデータ分析)を紹介したのはなつかしい思い出。
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