ある一人の研究者の転換点をめぐるメモワール
2013.02.14 Thursday 07:08
井庭 崇
でも、この原稿が書けたことで、大きな一歩を踏み出せた気がした。ここで書いたことをベースに、より詳細に考えていこう、と考えた。そこで、creativityに関する文献も読み始め、なぜ新しい理解が必要なのかについて考えを深めようとした。
それが、COINsカンファレンスで発表した論文。30分の発表の後、とても反応がよかったのは、意外にもデザイン系の人たちからだった。意外というのは、オートポイエーシスのシステム理論の話だったからだ。「詳細はわからないが、感覚と合う」という話だった。これはうれしかった。
この論文を書くためには、いろいろ言い回しを学ばなければならなかった。ルーマンを英語で読み直し、creativityについての文献を読み、そこでの言葉遣いを学ばなければならなかった。この論文も相当苦しい戦いになった。
これらの思考を深めていくときに、根本的なところで依拠していたのがニクラス・ルーマン。彼の「社会」を人から引き離して捉えるという発想が、僕の「創造」を人から引き離して捉えることの唯一の土台。この年、僕はルーマンから離れたように見えるが、実際にはより深くコミットしたといえる。
この創造システム理論は、もっと詰めたいと思っている。実は2010年のCOINsカンファレンスでは、"Autopoietic Systems Diagram for Describing Creative Processes" (Takashi Iba) というのも書いている。
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