ハイエク、ルーマン、アレグザンダーをつなぐ
2008.04.12 Saturday 10:58
井庭 崇
最近僕は、経済学者/社会哲学者のフリードリッヒ・ハイエクと、建築家のクリストファー・アレグザンダーの思想を、社会学者ニクラス・ルーマンの社会システム理論を介してつなげることができないかと考えている。
フリードリッヒ・A・ハイエク(1899年?1992年)は、「自生的秩序」や、その秩序を生み出す行動の「ルール」、そして「現場に分散する知識」などの概念を提唱している。クリストファー・アレグザンダー(1936年?)は、「成長する都市」や、建築における名づけ得ぬ質を関係性の「パターン」として捉え、その知識を「パターン・ランゲージ」として記述・共有することを提唱している。どちらも自生的な秩序形成と知識の役割について議論しているといえる。
分野が異なるので、あまり比較されることがない二人であるが、とてもよく似た主張をしている。たとえば、ハイエクは、社会は「自然」と「人工」の間の「自生的な」存在であり、一部の人間が「設計」するということはできないと主張し、以下のように語る。
「文明は人間の行動の産物、あるいはもっと正確にいえば数百世代の人びとの行動の産物である。しかしその意味するところは、文明が人類の設計というのではなく、また、文明の機能あるいはその存続が何に依存しているのかを人間が知っているということでもない。文明を構想しその創造に着手することのできる知性を前もって与えられている、とする人間の概念はすべて根本的に誤っている。人間は知性のなかでつくりあげたある型を世界にそのまま押しつけたのではなかった。人間の知性それ自身、環境適応の努力の結果としてたえず変化する一つの体系である。」(Hayek, 1960: p.39)
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