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2005年04月27日

イン、ロバート・K.、(近藤公彦訳)、『ケース・スタディの方法』、千倉書房、1996 (第1章+第2章) (牧 兼充)

イン、ロバート・K.、(近藤公彦訳)、『ケース・スタディの方法』、千倉書房、1996
第1章-第2章 (レジュメ作成: 牧 兼充)
2005.4.28
【要旨】
本書は、社会科学リサーチ手法の一つであるケース・スタディの方法論及びリサーチ戦略についてまとめたものである。ケース・スタディが望ましいリサーチ戦略であるのは、1)「どのように」あるいは「なぜ」という問題が提示されている場合、2)研究者が事象をほとんど制御できない場合、3)現在の現象に焦点がある場合、である。
ケース・スタディは、1) 厳密さの欠如、バイアスの発生する、2)科学的一般化の基礎を提供しない、3) 調査に時間がかかり、量が多すぎて読めない文章になる、などの先入観をもたれているためリサーチ戦略として低く評価されている。1)については、データ収集の方法論の確立により解決可能であり、同様の課題は他の手法にも存在する。2)については、ケース・スタディ法は、サンプルを代表するもの(頻度を列挙するもの)ではなく、理論を拡張し一般化することを目的としているから当然である。3)については、ケース・スタディの手法次第である。これら以上に最重要の課題は、すぐれたケース・スタディを行うのは極めて難しいということである。
ケース・スタディ法は経験的探求であり、特に現象と文脈の境界が明確でない場合に、その現実の文脈で起こる現在の現象の研究を行う。ケース・スタディによる探求は、関心のある変数が多い場合に、三角測量的手法を用いながら、理論命題の検証を行う。サーベイ戦略や実験戦略を行うには、あまりにも複雑な現象を、因果的な結びつきを説明する場合に適している。
リサーチ設計は、「研究問題」、「命題」、「分析単位」、「論理」、「解釈基準」により構成される。リサーチ設計の質の判断基準として、「構成概念妥当性」(研究中の概念に関する正確な操作的尺度の確立)、「内的妥当性」(擬似的な関係とは区別される、ある条件が他の条件をもたらすことを示す因果関係の確立)、「外的妥当性」(研究の発見物を一般化しうる領域の確立)、「信頼性」(データ収集の手続きなど研究の操作をくり返して、同じ結果が得られることを示すこと)がある。
ケース・スタディの設計としては、「単一ケース設計」or 「複数ケース設計」と「全体的」or「部分的」の合計4種類が存在する。単一ケース設計と複数ケース設計については、本質的に差があるものではなく、リサーチ設計における差異である。複数ケースを用いた場合には、比較が可能となるが、これは単一設計における追試の論理を補強する以上のものではない。単一ケース設計においては、「決定的ケース」、「ユニークなケース」、「新事実のケース」を取り上げる場合に有効である。単一ケースの中で、一つ以上の分析単位が含まれる場合には、部分的設計と呼ばれ、組織全体的な特徴の検討を行う場合は、全体的設計と呼ばれる。
【コメント】
SIVを分析対象とした「インキュベーション・プラットフォームにおける誘因と貢献のメカニズム」を検証する場合には、「単一ケース」「部分的」ケース・スタディとなる。命題「インキュベーション・プラットフォームの活性化には、個別ネットワーキング組織の個別的活動とその結合が必要である。」という点について検証を行う。そのために個別のネットワーキング組織に関する比較検証を行う。
今後、「構成概念妥当性」、「内的妥当性」、「外的妥当性」、「信頼性」の4点を考慮した、リサーチ設計を進めていく。

投稿者 student : 2005年04月27日 19:20

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