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2005年05月20日

Benbasat, I., Goldstein, D.K. and Mead, M., "The Case Research Strategy in Studies of Information Systems," MIS Quarterly (11:3), 1987, pp. 369-386.  /Markus, M.L. "Power, Politics and MIS Implementation," Communications of the ACM, 26, 1983, pp. 430-444.

Benbasat, I., Goldstein, D.K. and Mead, M., "The Case Research Strategy in Studies of Information Systems," MIS Quarterly (11:3), 1987, pp. 369-386.

本論では、情報システム(IS)分野において、定性的研究方法の一つとしてケース・スタディ戦略を提案したものである。とりわけ、ISジャーナルからのケースをサンプルとし、その評価を通して、情報システム分野におけるケース・スタディの長所・短所の評価の確立と、適切な研究トピックの選別を試みている。
情報システムエリアは一定の技術進歩および革新によって特徴づけられる。これらにおいてケーススタディ研究が有効である3つの理由があるとする。第1に、研究者は、そのままの環境中の情報システムを研究し、最先端技術に関して学習し、事象から理論を一般化することができること。第2に、「どのように」と「なぜ」の質問への回答を提示するためにケース・スタディ・リサーチが有用であること。第3に、従来の研究が行なわれていないエリアを研究する適切な方法であるとしている。
 あるがままの環境、あるいは同時代の出来事への焦点が必要な場合、ケース方法論は明白に有用である。同様に、強い理論的な基礎によってないような研究現象は、ケース・スタディが有益たりうる。反対に、研究に主題または出来事をコントロールするか操作しなければならない場合、ケース戦略は適切ではない。しかし、多くの場合、使用するかの決定要素は明確ではない、そのためYinやBonomaの議論を紹介し、ケース・スタディの鍵となる特徴を提示している。
ケース・スタディ研究における、長所および短所の両方を例証するための、4つの事例研究をサンプルとしてとりあげている。
(1)マーカス:ISインプリメンテーション (2)ダットン:会計のインパクト・モデル
(3)ピバーン:戦略のIS立案       (4)オルソン:システム開発機能
以上を踏まえ、ケース・スタディの総括的評価を述べる。

・研究テーマ ケース・スタディの主なテーマは、インプリメンテーション(Ex.情報システムや意志決定支援システムの成功か失敗の可能な原因)である。
・研究目的 一般に、研究者の目的は明らかには指定されていない。
・分析およびサイト選択のユニット 分析のユニットは、公表された多くの中で提供されませんでした。明瞭な研究目的の不足と一致する問題および恐らくその結果である。
・単一のケース対複合のケースのデザイン
研究者は、できるだけ多くの同様の特性を備えた均質のサンプルを求めている。しかし、多くの場合、選択する単一or複合の設計の理由は説明されてはいなかった。
・データ収集
 ケース・スタディの約半分は、多数の手段で集められたもので、もう半分はもっぱらインタビューであった。多くの場合では、データ収集方法は曖昧であり、また、詳細は提供されていなかった。また、信頼度を増加させる三角測量の使用もまれであった。我々は、データ出所の明瞭な記述、およびそれらが研究の発見物に寄与する方法が発見物の信頼度および有効性の重要な様相であると信じている。
Yinに記述されるように、手続き規則を厳守するべきである。

Markus, M.L. "Power, Politics and MIS Implementation," Communications of the ACM, 26, 1983, pp. 430-444.

本論文ではGTC社における財務情報システム(FIS)の導入に伴う、社内の抵抗の要因に関するケース・スタディである。この経営情報システム(MIS)の導入に際して起こる抵抗の理由を3つの基本的な理論によって、分析し、その対応策を述べている。結果、MISよりよい導入戦略、およびコンピューター利用技術がインストールされた組織造りのよりよい結果に結びつくことを願っている。

(1)三つの抵抗要因
①内部要因 個人や組織における内部要因を起因として発生する。互換的な結果として、「全ての変化に抵抗」、「分析的認識能力を持つ人は賛成し、一方直感的思想の持ち主は導入に抵抗する」などが想定される。抵抗発生点は、システム利用者である。
②システム要因 システム自体の要因のために抵抗した場合。互換的な結果として、技術的に不十分なシステム、人間工学で設計されていないシステム、およびユーザー・フレンドリーでないシステムに抵抗するのである。
③システムと使用者の相互作用要因 政治的なバージョンとも呼べる。システムとシステム使用による業務内容が密接に相互関係を持っていることにより発生する。例として、MIS導入によって権限を失う部署からMIS導入への反発が起きる。抵抗は、システム使用者に加えて、システム設計者によっておきる。

GIS社の「相互作用論」に相当するケースを分析し、
コンピューターベースのシステムが根本的な組織変更のタスクを単独で遂行することができないということ、システムの特定のデザインが一部分ユーザとデザイナーの関係の製品であるということ、そして、導入戦略のため、システムの特定の設計内容のための最良の規定が、完全な分析を行うべきということを示唆している。

また、解決方法として
(1) より快い方法でシステムのデザインを変更すること
(2) システムのために使用者の目的のうちのいくつかを犠牲にすること
(3) システム設計過程の選択された面あるいはすべての面にユーザーが参加することを可能にすること
(4)それらによって評価された他のいくつかの譲歩を分割上のユーザーに与えることにより、システムの受理を「買う」こと
(5} スタート時からシステムをユーザーに参加させ、売り込むこと
(6) そもそもプロジェクトをさせる
という選択肢があることを指摘している。

【コメント】
Benbasat等が指摘するように、ケース・スタディを行う際の不十分なマイナス要素が頭に残った。Markusの単一ケースながら分析過程は美しく思うが、のケース・スタディは他の手段が無いために、やむなく選択せざるをえない不完全で難しいものというYinを読む以前の元の感覚にまた戻ってしまった気がします。(M1 脇谷康宏)

投稿者 student : 2005年05月20日 00:34

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