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2005年05月08日

Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods, 2nd ed.,"Sage, 1994.(邦訳:近藤公彦、『ケース・スタディの方法』、千倉書房、1996年.)第3章-第6章

Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods, 2nd ed.,"
Sage, 1994.(邦訳:近藤公彦、『ケース・スタディの方法』、千倉書房、1996年.)
第3章-第6章
(牧 兼充)

要約

ケース・スタディ研究者は、「問題を問うこと」、「傾聴」、「適応性と柔軟性」、「研究中の課題の把握」、「バイアスのないこと」などのスキルが要求される。実施にあたっては、「プロジェクトの概略」、「フィールド手続き」、「ケース・スタディ問題」、「ケース・スタディ・レポートの指針」などのケース・スタディ・プロトコルの開発が重要であり、これにより研究の信頼性を高める。またパイロット・ケース・スタディは、データの内容と従うべき手続きの両面からリサーチ・プランの洗練に役立つ。
データ収集にあたっては、「文書」、「資料記録」、「面接」、「直接観察」、「参与観察」、「物理的人工物」の6つの情報源があり、適切な情報源を選択が必要である。データ収集にあたっては3原則の考慮が必要となる。原則1は「複数の証拠源の利用」であり、具体的には「データ源」、「異なった評価者間」、「同じデータ群に関する視点」、「方法」について三角測量的手法を用いることにより、構成概念妥当性が高まる。原則2は、「ケース・スタディデータベースの作成」であり、データあるいは証拠の基礎、論文、報告書、あるいは本の形をとった研究者のリポートをまとめることにより、研究の信頼性が高まる。原則3は、「証拠の連鎖の維持」であり、個別の証拠が理論的につながっていることが重要である。
 分析にあたっては、大きく分けて「理論命題への依拠」と「ケースの記述の開発」の2つの戦略がある。主要な分析法としては、「パターン適合」、「説明構築」、「時系列分析」、「プログラム論理モデル」があり、その他の分析法である「部分的分析単位の分析」、「反復観察の実施」、「ケース・サーベイの実施:ケース間の2次分析」と組み合わせることができる。分析にあたっては、1)すべての関連する証拠に依拠していることを示すべき、2)すべての主要な対立解釈を含めるべき、3)ケース・スタディのもっとも重要な側面に取り組むべき、4)自分自身の先験的な専門知識を持ち込むべき、などの考慮すべき点がある。
レポート作成にあたっては、オーディエンスを意識し、ニーズへの方向付けを行うことが重要である。リポートは、オーディエンスとのコミュニケーション手段であり、書面リポートと非書面リポートがある。例示的構造としては、「線形分析」、「比較」、「年代記」、「理論構築」、「サスペンス」、「非連続」があり、それぞれ説明型、記述型、探索型などの研究目的によって使い分ける必要がある。リポート作成にあたっては、1)極めて初期の段階から開始すべき、2)必要に応じて身元は実名を使い分けるべき、3)草稿のレビューにより妥当化すべき、などの考慮点がある。模範的なケース・スタディとは、「重要」、「完全」、「代替的な視点の提供」、「十分な証拠」、「魅力的」の諸条件を満たすものである。


コメント

 本書は、ケース・スタディ法を研究手法として活用するにあたっての、具体的留意点がまとまっており有益である。しかし実際には、本書を読んだだけで、方法論の理解は困難であり、今後以下を行う必要を感じる。 1)本書に従ったケース・スタディ法に基づいた論文の執筆。 2)具体的な論文を参照したモデルと実体のマッピング。 3)研究の設計テストである「構成概念妥当性」、「内的妥当性」、「外的妥当性」、「信頼性」の4項目に基づいた個別論文の評価。

投稿者 student : 2005年05月08日 17:08

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