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2005年07月07日

企業者ネットワーキングの世界

ネットワーキングは、人と人との結びつきをつくり出す意図的な行為である。個の個たる所以を失わせることなく人とのつながりを創造的に生かすことである。異質との接触、対対等の関係、ゆるやかな相互依存・連鎖がネットワーキングを特徴づける。ネットワーキングとは連帯しあいながらも個を生かす行為である。また、本書では企業者はネットワーキングを通じて人々との間のアイデア、情報や資源などの結合の担い手、自分で会社を起こす「企業者」という側面から捉えている。つまり、企業者ネットワーキングというのは、企業者が人との創造的なつながりを形成いくことである。この本はその企業者のネットワーキングの実践の記録とその論理的解明を目指している。理論的な背景としては企業者論、社会的交換理論、資源動員論と自助動員論、及び社会的ネットワーク理論のそれぞれの研究領域と相互に関連しあっている。特に、企業者ネットワーキングの7つのパラドクスを抽出し、理論的にも実践的にも企業者のネットワーキングのあり方を示している。
本書はMIT Enterprise Forumと the Smaller Business Association of New England,(SBANE)の2つのネットワーキング組織の比較および、企業者コミュニティの構成員の職種や仕事の性質、ネットワーキング組織の成長段階別の比較が行われる。(MIT Enterprise Forumと the Smaller Business Associationは以下「MITフォーラム会」と「SBANEダイアローグ会」と略称する。)その比較の内容としてはMITフォーラム会が敷居の低い公開の討論(フォーラム)の場であるのに対し、SBANEダイアローグ会はもっと敷居の高い深い対話(ダイアローグ)の場である。この2つの組織は弱連結(MITフォーラム会)と今強連結(SBANEダイアローグ会)の対比や用具性と表出性の対比などから示唆される次元や属性の特徴が分かってくる。MITフォーラム会とSBANEダイアローグ会は弱連結と強連結のネットワーク組織としての比較によって、構成員のネットワーキングの特徴が示すことができる。弱連結と強連結は組織のネットワークの構成員のつながりの度合いだけでなく、情緒、情報、文化においても同じ特徴をあらわす。
強連結よりも弱連結のほうが異なる世界を結びつける架け橋連結として作用しやすいのである。集まりと集まりとの間のマクロの統合は、弱連結による緩やかな連帯によって結成される。弱い結びつきでしかつながっていない人々との方が情報の入手、異質な発想との接触、思いもかけぬ人への紹介・アクセスの可能性の視点からは強連結より強いである。これを「弱連結の強み」という。
<コメント>
日本よりは韓国のほうが全般的に強連結の特徴を持っている社会だと思う。インタネットの普及によって韓国社会にも弱連結の色合いが強いネット社会浸透し、日本より早くネット社会が広がっていくと思う。これは文化の弱連結、強連結によって説明できるのではないかと思う。弱連結の集団の特徴がよくみられるのがネット上のコミュニティで、そのコミュニティを有効に活用することは新たな弱連結社会へのシフトを意味するのでは。        <池銀貞>

投稿者 student : 2005年07月07日 08:29

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