男も女も共に自立したら、なぜ家族が必要なのでしょうか。必要ではありません。 自立は二人で一緒に生活する必要性の根拠を崩します。すべてのことが独りでできる ならば、家庭にパートナーは無用です。うるさいだけです。
役割が内と外に分化していた家庭では、主婦は家庭の維持にとって不可欠な存在で す。どこまでも主婦は必要な人です。だから二人で生活することができるのです。二
人は、それぞれ自分の性をいかして、専門家になります。仕事ができる夫と、家を奇 麗にしておくプロの妻のできあがりです。ここでは、必要性が二人の関係を太く強固
なものにします。家族が社会の最小の単位である、という根拠がここにあります。こ れ以上に分解するとは、誰も思ってはみなかったのです。
それが、なんと、自立という言葉によって、家族の統合原理が一挙にくつがえされ ます。もう必要性は説得力を失います。とすると、残るのは『愛情』といううつろい やすく・はかないトラブルメーカーだけです。いま愛しているから一緒に生活した
い、というだけです。当然二人の関係は希薄になり、微妙なものになります。いつ壊 れてもおかしくないから、二人は二人でいることに気をつかい、そしてそれを大切に
しなければと思います。ただこれは、疲れることです。だから離婚が頻繁になり、そ して飽きずに懲りずに再婚を繰り返します。無論、シングルズに徹底するライフスタ
イルが発生するのも同様の背景をもつからです。
母が仕事をもつということは、それが女の自立に関連するかぎり、以上のような時 代状況の変化を意識しなければなりません。単に父さんの甲斐性がないので仕様がな く働き、家のことも全て母さんまかせ、というスーパー母さんの場合は、このような
デリケートな問題はありません。頑張ってください。
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