アフォーダンスと受動歩行・シナジェティックス
アフォーダンスってこれまで何冊か本を読んではいたものの、なかなか腑に落ちなかったのだが、受動歩行やH. Hakenのシナジェティクスとの関連が述べられている本を読んで、やっと分かった(ような気がする)。
受動歩行は卒業論文として取り組んだ。長さや重さやモーメントをうまく設計した二重振り子をつくれば、制御無しでも歩行していくというもの。脚のカタチと環境との相互作用(重力や回転)の中に、制御のような知性が組み込まれていると考えていいだろう。
中西泰人,浜田陽一,下山勳,三浦宏文:四足受動歩行ロボットの研究,第6回知能移動ロボットシンポジウム,pp.21-26(1992).
こちらは名古屋工大の二足受動歩行ロボット。
こうした下位のミクロなパラメータ(制御パラメータ:受動歩行では足の長さや重さやモーメント)と創発されてきた上位のマクロなパラメータ(秩序パラメータ:歩行スピード)との関連を調べようとするのが、自己組織化システムでありダイナミカル・システムズ・アプローチである。
アフォーダンスで言うところの「不変項」というのが、秩序パラメータ:歩行スピードに相当し、環境との相互作用の中で下位パラメータとそれらの関連のさせ方を探っているのが「ダイナミック・タッチ」なんだと理解した。
このミクロとマクロな関係は循環しているし、マクロなパラメータはさらに上位のシステムの制御パラメータとして働くこともある。物理現象の中でこうした関連を探るのがマルチスケールシミュレーションの研究と言える。
シナジェティクスも物理現象から社会現象までを取り扱おうとしていることに学生時代の自分ははげしい興味をかきたてられたものだった。しかしながら対象とされた社会現象があまりにもマクロなところや、今の自分の関心(マルチスケールメディアや心理的・認知的道具:高次の精神的な活動と人の物理的環境との相互作用の関連について)と少し違う気がする。
とはいえやはり、大きな示唆を与えているのは間違いない。というか、自分の中でアフォーダンスと、大学生・大学院生の頃に勉強していた受動歩行・シナジェティクスが(今頃)つながった!ということにオドロキを覚えた。
三嶋博之 エコロジカル・マインド NHKブックス
河野哲也 環境に拡がる心 勁草書房
H.ハーケン 協同現象の数理―物理、生物、化学的系における自律形成 東海大学出版会
(余談)
自分達のロボットの歩行距離を伸ばそうとした時に、意外とネックになったのが、床の剛性だった。足の長さが70cmぐらいあるロボットを作っていたので(なんでそのスケールにしたかの理由は、前任者の先輩のロボットもそうだったからなんだけど…)、ロボットが歩く度に木で作った斜面がたわんでしまい運動エネルギーがそちらへ吸収されてしまったのと、斜面の大きさが研究室の大きさ以上にはできず、四歩ぐらいしか歩かなかった(w
ロボットの名前はLucy。先輩の名前がMirockyで弥勒菩薩からとったから、オマエも仏像から付けろと言われ…盧舎那大仏からLucyと名付けた。写真はどこかにあるはずだから、見つけたらアップしたい。