現代思想の基礎
- 目的・内容
いわゆる「現代思想」と呼ばれるものそれじたいは、流行としてはピークを過ぎている。理論的には60年代から70年代、流行としては70年代が盛りであったといってよい。
にもかかわらず、いま「現代思想」を学習する意義は、むしろ高まっている。それは何よりも、その影響が哲学にとどまらず他の学問分野に広まり、特に社会学や文学研究、あるいは歴史学などにおいては、もはや「現代思想」の基本的理解抜きには成立しなくなったからである。これらの学問分野における「現代思想」の応用的導入以前と以後の変化は、経済学にたとえるならば、数式モデルやゲーム理論の導入以前と以後と同様といっても過言ではないかもしれない。したがって、「現代思想」を学習することは、もはや学問のための学問の域を超えて、現代社会を読み解く基礎教養となりつつある。いわば、「現代思想」は一時的流行の時期をすぎて、具体的応用の局面に入ったといえるだろう。
この研究会担当者もまた、「現代思想」の研究者ではなく、歴史や社会学の方面からこの分野に近づいた人間である。そのためもあって、思想そのものよりも、その思想を応用して現代社会や歴史的事象をどう解読できるかということに興味がある。研究会の場では、たとえばソシュールやデリダといった特定の思想家の思想を極めるよりも、概略と要点を押さえて応用的学習に役立てる基礎教養を身につけることを狙いたい。なお、応用の実例としては研究会2で「国民国家/ポストコロニアル論」をあつかうので、並行して履修することをお勧めする。
- 参考文献
久米博「現代フランス哲学入門」(新曜社)、別冊宝島44「現代思想入門」などを基本にし、個々
の思想家の著作と、講談社の「現代思想の冒険者たち」シリーズを併用する。土田知則・神郡悦子・
伊藤直哉「現代文学理論」(新曜社)もよい。
5/10/1999ソシュール『一般言語学講義』(中川譲)
5/31/1999アルチュセール『国家のイデオロギー』(石野純也)