かなりの数のエヴィデンス・カードがたまってくるようになると、”エヴィデンスの整理”という点が問題となる。エヴィデンスがたまってくるにつれて、ディベートの試合でそれを使えるようにフィードバックさせることが出来るかが、とても重要になるのだ。必要なときに、必要なエヴィデンスを見つけることが出来なくては、エヴィデンスの価値を失してしまう。それ故、エヴィデンスのフィードバックは、リサーチそれ自体と同じく、重要なのである。
ふつう、学生は誰もが、最善を尽くせるように”整理術”を向上させる。学生が自分達の”手持ち”をいつも弁えていて、ディベートの試合中にエヴィデンスをフィードバック出来れば、その整理術は充分である。繰り返すが、重要なことは、”術”の何たるかではなく、”術”を使えることにある。しかしながら、よく使われる整理術のいくつかは、複雑な形態をとっていて、ディベーターがどれだけエヴィデンスを集めたかに依っている。
整理術のすべてに共通する特徴は、エヴィデンスをカテゴリーに分割する点にあり、また、資料をカテゴリーを書き留めた索引カードを控えてファイル・ボックスにためておく点にある。どんな整理術が使われようとも、カテゴリー内にあるカードが、出来るだけ少ない数で保たれていることが重要だ。一つの見出しに、10枚以上のカードがあると、そのファイル内にある資料が何か分からなくなり、一番最初に見つけたカードを使う羽目になる機会が増える。たとえどのファイルにどんなエヴィデンスがあるか知っていても、余りにもたくさんのカードが含まれたカテゴリーは、実際のディベートの試合のときに、その検索に時間かかりすぎることとなるだろう。”整理術”は、エヴィデンスをディベートの試合中に出来る限り見付け易くするようなものとすべきである。
-Alphabetical Filing System-
最も初歩的な整理術は、題別にカードを仕分けし、アルファベット順にその題材を整理することである。ディベーターが農産物輸出に関する何枚かのカードを持っていたとしよう。ディベーターは、リファイルし易くするように、それぞれのカードの右上の隅に「農産物輸出」とラベルを振った索引カードがあるところへ、そのカードを納める。この方式は最近のディベーターが最もよく使い、余り枚数が多くない場合に限り、かなりよく機能する。しかしながら、たいていのエヴィデンスに要求されるのは、より手の込んだ整理術である。
ディベーターがエヴィデンスをたくさん手に入れるにつれて、より手の込んだ整理術を向上させる必要に駆られる。必要なのは2つのファイル・ボックスであり、そのひとつは肯定側にとってのそれで、もう一つは否定側にとってのファイル・ボックスである。それ故、エヴィデンス・カードは、大きく分けて、肯定側・否定側の名が付いたファイルに納められることになる。
しかし、残念ながら、そのような仕組みには問題がある。まず第一に、ディベートの試合中、適切なラベルを見付け、最適なエヴィデンス・カードを見付けるのにかなりの時間がかかることである。第二に、適量の資料が、肯定側・否定側双方にとって、容易に分類できないことにある。これらの理由によって、ノートブック・インデックス・システムがより便利だと認められてきた。
-Notebook Index System-
ノートブック・インデックス・システムでは、索引のファイルのカード(仕切)は、題材によって区分けされるのではなく、番号が振られる。「農産物輸出」ならば、”Category A”となるだろう。(訳者注:「農産物輸出」が英語で”Agricultural Exports”であるから、”Category A”となる。日本語ならば、さしずめ、”カテゴリー「の」”となると思われます。)ソビエトの輸出を扱ったカードは、”A 14”と番号が振られるだろう。基になるノートブックは、ファイリング・システム全体に対して保存されるものだ。それぞれのファイル・ボックスに入った資料のすべてに、一枚のインデックス・シートが付けられる。それを見ることによって、特定分野に適応したコード番号を即座に参照することが出来る。それぞれのカテゴリーにあるカードの数は、カテゴリーの数を増やしたり、最も弱いエヴィデンスを消去することによって、少なく保たれる。
ファイル・ボックスはどれもコード番号によって整理されるべきである。主要な見出しにはそれぞれ文字とカテゴリーの更に下の番号を付け加えるべきであり、インデックス・シートを見れば、ファイルに収まっている資料の要約が分かるようにする。次に示すのは、インデックス・シートの一部分であるが、水質汚濁のテーマに使われるものである。
(Index System)
A.
空欄は、エヴィデンス・カードが増えてゆくにつれて新しく付け加わるカテゴリーの為に残してある。新しいカテゴリーの欄が不足したり、少なすぎるよりは、空欄の数をかなり多く残しておいた方がよい。それぞれのカテゴリーにあるカードの数は、一番多くて10枚に止めておくべきである。一つのカテゴリーに10枚以上のカードがあると、ファイルからカードを出して読む時間がかかるし、カテゴリーを更に分けることを深刻に考えなければならなくなる。
エヴィデンス・カードの中のインデックス・カード(仕分けカード)は、適切な文字数と数でラベルされてなければならない。そして、エヴィデンス・カードはそのカードがある箱の番号と題材が書かれていなければならない。もし、ディベートの試合中に「国家には、水質を維持するコストを払う財政的余裕はない」という発言を立証したければ、インデックス・シートには、その資料は”A 3 ”にあるということがはっきりと書かれているべきである。そして、使い終わったら”A 3 ”の見出しのあるところへ素早く戻す。そのカードの右上には勿論、そのことがはっきりと書かれている。
インデックス・シートシステムを使ったディベーターは、そのシステムは大量のエヴィデンスを扱うのにとても効果的な方法であると報告している。カードが用意に整理でき、素早く見付け、試合が終わると同時に素早くリファイルできる、とも言っている。多くのインデックスの見出しをコードに割り振ることが出来る点からも、カテゴリー内全体がエヴィデンス・カードとインデックス・カードがゴチャゴチャになっていないという点からも、おそらく本当のところだろう。また、ファイル・ボックス全体を探すときにも、大まかな見出しを見るよりは、そのコードを見る方がはるかに容易である。ここで、忠告。「ディベーターがインデックス・カードをなくしてしまったら、どこにエヴィデンスがあるのか知る手だてはない。いつも、2部のコピーを持ち運び、家に予備を保存しておくのが賢明である。」
-Maintaining the Evidence Files-
ファイルは定期的に読むのが賢明である。ありふれた事柄はカードにするべきではない。あるテーマについての知識が増えてゆくにつれてカードの中には、その価値が減ってゆくものもあろう。しかし、時には、見落としてしまったカードや、初めての時にはその価値に気づかなかったり理解できなかったりした資料を見付けることもあるだろう。そんな資料がそのファイルの中で最も良いエヴィデンスに突如としてなることも、大いに有り得る。重要なのは、エヴィデンス・カードそれ自体と”ディベート”することにより、考えの道筋を進展させることだ。重要なのは、そのファイルの大きさではなく、そのファイルの中にあるエヴィデンスの質なのである。
インデックス・カードよりはむしろメモにエヴィデンスのすべてを収めてしまう生徒は、ノートにすべての資料をファイルしておくべきである。そしてそのノートは、肯定側と否定側に分割しておく。肯定側のノートは、第一立論、論題充当性に対する反駁、予想される否定側立論への反駁、肯定側第一反駁への反論。その議論への特定の反論に分割しておくべきである。また、否定側のノートは予想される議論への反駁を分けておくのがふつうである。その議論に特定の論点は、一般的にアルファベット順にまとめられ、色別ブロック別に分けられている。
-Questions for discussion-
-Activities-