論題(命題)-Proposition-



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論題(命題)-Proposition-

大抵のディベートの論題は、明確で重要な選択を示す。論題の役目は、ディスカッションやディベートのために焦点を絞ることである。命題の3つの型(事実命題、価値命題、政策命題)は第4章で議論される。

論題はある決まった特徴を持たなければならない。その特徴には、

(significance)

(controversy)

(a single area)

(debatability)

(durability)が含まれる。

重要性(significance)
ディベートされる問題は重要なものであるべきであり、国内外を問わず、大多数の人々に影響を及ぼすものでなければならない。働くことのできる全てのアメリカ国民に、どのようにして職を与えるかという問題は、その問題がほとんどのアメリカ人に影響を及ぼすが故に、重要性を持った論題の一つであろう。インフレーション、医療へのアクセス、毒物の廃棄、汚染、国防、世界的飢餓、原子核兵器の増大などは重要な問題領域であり、ディベートの問題の候補となり得るものであろう。しかし、市民税、郡の刑務所、州発行宝くじ、銃に関する法律は普通、ディベートの論題には適していない。限られた数の人にしか影響がないという点で重要性を欠いているのだ。だが、そのような問題領域が·決·し·て·デ·ィ·ベ·ー·ト·に·適·し·て·い·な·いということを意味するのではない。状況によっては、視野の限られた問題をディベートすることを求められるときがあるかもしれない。これは、

の場合、よくあることだ。オーディエンス・ディベートとは、まったくディベートの知識がない人たちを前にして行うディベートのことである。通常、ある限られた問題領域が選ばれるのは、それが、ある特定のオーディエンスにとって重要で、より大きなインパクトを持つ可能性があるからである。

-Questions for discussion-

  1. 視野が通常より限られた論題をディベートすることが適しているときはあるのか?また、その理由を述べよ。
  2. あなたの学校の生徒団体にとって重要であると思われる問題領域を3つ挙げ、名前をつけなさい。あなたの学校に関係のない人々にとっても、それらは重要性を持っているか?

議論充当性(controversy)
論題は、それが議論充当性をもつ(議論の余地がある)場合にのみディベートができる。つまり、その論題に関して、意見の対立か利害の対立がなければならない。多くの場合、事実命題では議論も論戦もない。それゆえディベートにもならない。例えば、「アメリカの憲法は政教分離をうたっている」という論題は、議論ができない。実証することができる明白な事実だからだ。しかし、「ケネディ大統領はたった一人の暗殺者に殺された。」という論題は事実命題である。議論の余地を多く残しているからだ。

-Questions for discussion-

  1. 上に例として挙げた2つの命題において、なぜ一方はディベートでき、もう一方はできないのか?

単一概念(a single idea)
ディベートの論題には、ただ一つの概念・見解が含まれているべきである。効果的に準備し議論するためには、ディベーターは一つの問題領域に焦点を絞ることができなければならない。

には、2つの議論のテーマが示されている。一つは、エネルギー独立問題であり、もう一つは、汚染対策である。同じ試合で両方のテーマをディベートしようとすると、あまり発展性のない議論になり、多大な混乱を生んでしまう。別個の論題としてディベートされるべきである。

-Activity-

  1. 上で例として挙げられた命題は2つの概念を含んでいる。それを、それぞれが一つの概念をもつ2つの論題に書き直しなさい。

ディベートできること(debatability)
論題はできる限り公平に作られるべきである。そのディベートに色をつけてしまうような感情的な言葉は、避けられるべきだ。感情的な言葉を使ってしまうと、肯定側か否定側に不公平な利点を与えてしまう。例えば、

という論題は、否定側に偏向して述べられている。なぜなら、矯正が、不可能ではないにしても困難であるということをほのめかしているからだ。
論題は、肯定側にも否定側にも偏らぬように作られるべきである。例えば、

という論題は、否定側に重荷が置かれている。アメリカ国民は飲料水をきれいにする

を持っていないことを主張するのは、否定側には割が合わない。よりディベータブルな論題は、

となろう。この言葉遣いは、肯定側にも否定側にもよりよい問題のバランスと議論を与える。

-Questions for discussion-

  1. なぜ、論題がディベータブルであることが重要なのか?
  2. 上で例として挙げた2つの論題において、なぜはじめに作られた論題はディベータブルではないのか、それぞれ説明しなさい。
  3. 例で挙げた矯正プログラムに関する論題において、それをディベート出来るようにするにはどのように書き直せばいいか?

永続性(durability)
取り上げようとしている問題は、ディベートを行っている間にも存在し続けるであろうか?例えば、

という論題は、学校の管理者側が現在その提案を履行しようと考えているとすれば、ディベートにとってはきわどいテーマであろう。なぜなら、今学期中に学校管理者側がその提案を受け入れるかどうかをディベートすることに、肯定側の存在価値がほとんどなくなってしまうからだ。論題は興味あるものであるべきだが、きわめて近い将来にはその受け入れの見込みのないものでなければならない。

-Questions for discussion-

  1. の5つの特徴はなにか?

  2. 永続性は、なぜ論題に不可欠な特徴なのか?

-Activity-

  1. 下に挙げる論題はそれぞれ誤りを含んでいる。5つの論題の特徴のうちどれを満たしていないのか見極めなさい。また、その理由を説明しなさい。

    論題:

    論題:

    論題:

    論題:

    論題:

    論題:

    論題:

    論題:

  2. Activity 1 の論題で誤りを見極めた後、それらを正しい論題に書き換えなさい。

  3. ディベートしたら面白いだろうと思う論題を3つ書きなさい。それらには、学校政策、地方政策、州条例、国家の問題を含むことが有り得るが、3つの論題のうちの一つが、論題の5つの特徴をどのように満たしているか説明しなさい。


Mineichiro Yamakoshi
Sat Dec 16 12:20:50 JST 1995