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Juli 19, 2005
夜更け、藤子F不二夫
明け方まで眠れなくて、本を読んでいた。
一つ目は「魂萌え!」。口で伝えると絶対に誤解されそうな恐ろしいタイトルの本なんだけど、夫に先立たれた59才の主婦が変わってゆく話。
新聞小説をまとめた本だから、重複が気になるところや、時差(新聞連載で読むと2日かかるところが、単行本で読むともの数分。その分量に対して、小説内で30分時間が過ぎたことになっていると違和感を感じる。読者が新聞で、2日にわたって読むことを想定していたのだと思われるけど)はあるけれど、新鮮で楽しかった。
みんなひどくてまぬけでだめな人ばっかりで。気弱で自己主張の弱い主人公のおばさんとか、気が強くて挙動不審で仲間内じゃアルツハイマーまで疑われるその友人とか、アメリカでうまく行かずに帰ってきて遺産をあてにする息子とか、死にそこなってカプセルホテルで暮らす老婆とか。
ただ、生きていくだけなのにね。どうして傷つけたり、傷付いたり、いがみあったりするんだろうね。それは、ただ生きていくことがきっとすごいことだからなのかも知れないね。
と、こんな本読んでも眠れるわけもなく、枕元にあった藤子F不二夫のSF短編集を読む。多分もう何十回も読んでるのだけど、懲りずにまた読む。ドラえもんのイメージがとにかく強い人だけど、この短編集を読むと、この人の頭のよさがわかる。
難しいことを、わかりやすく伝える能力に優れている。価値観をわかりやすくゆさぶってくれる。人間が動物を狩るように、人間は宇宙人に狩られても仕方ないか。なんで食欲は街中で発揮してもいいのに、性欲は部屋の中で隠れて発散させないといけないのか。地理的な国境がなくなり人単位で国家の創造は可能か。世界中の人が新種のウイルスにおかされること、それは進化ではないか。
昔の社会学者(Paul Lazarsfeld。といっても30年前くらい?)が提唱したミドルマンという概念があるのだけど、それを体現している気がする。ミドルマンというのは、専門家の提唱するときには難解な議論や概念を、流されやすい一般大衆にわかりやすくきちんと伝えることが出来る人のこと。もちろん30ページ程度の漫画じゃ思考のきっかけしか与えてくれないけれど、藤子F不二夫は、どんな議論もわかりやすく素敵な漫画で表現している。
これってめちゃくちゃすごいことだと思う。あこがれる。だって、今もちょっと社会を見渡してみればわかるけど、きままで考えなしに道を決めて、流されてゆく人はいつだってあまりにも多い。学者と世間はますます乖離してしまっている。個人は細分化し、世界は複雑化し。そんなときに、ミドルマンという存在はとても大事。一歩間違えば危険なアジテートになりうるけれど、きちんとモノを伝えられる人は、絶対に必要。特に主体意識がないとか言われるこの国じゃ。
というわけで、結局朝。
投稿者 POE : Juli 19, 2005 12:33 EM
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