IECP読書会
1999年5月10日(月)18:30-20:30@グローコム
taiyo@glocom.ac.jp
第3章 インターネットと情報公開法−アメリカにおける電子情報自由法(EFOIA)の成立− 第4章 エレクトロニック・プライバシーの危機−「情報スヌーパーハイウェイ」をめぐる動向− 第5章 アメリカの通信品位法に見るサイバースペースの合意形成 第6章 WTOにおける新しい情報通信の枠組み作り−21世紀へ向けた主導権争い− |
問題領域 |
対立の構図 |
対立点 |
問題設定 |
EFOIA |
政府対市民 |
公的情報 |
情報は誰のものか |
プライバシー |
アメリカ対ヨーロッパ:市民対企業 |
私的情報 |
|
通信品位法(CDA) |
政府対インターネット・コミュニティ |
サイバースペース |
ルールは誰が決めるのか |
WTO |
アメリカ対他の諸国 |
リアルスペース |
なぜこのような問題が設定されるのか
情報技術の発達と普及によって情報のフローが拡大し、意思決定・合意形成システムが変わり始めているからではないか。
国家の情報機能は、その内容を公にすることによって、情報収集能力を暴露することになる。同盟国も警戒して教えてくれなくなる。その結果、国家の情報収集能力は著しく阻害される。従って、情報は本当は、知っていても知らせないのが最も望ましいのである。
もしそのときに勇気のあるジャーナリズムがあって、日露戦争の実態を語っていればと思います。満州における戦場では、砲弾もなくなりつつあった。これ以上続けば自滅するだろう。そういうきわどい戦争だったのだと言うことが正直に書かれ、日本という国はその程度の国なんだという自己認識が明快に文章で提示されていたらと思いますね。国民は自分についての認識、相手についての認識がよく分かったろうと思うのです。(50-51ページ)政府には政府自身の秘密があるものですが、イギリスの場合は三十年で文書を公開します。アメリカもそうします。そのように政府はある機関は手の内は見せないにしても、何年か経つと手の内を明かす。そういう国というものは、やはり国を誤らないですね。(62ページ)
日本のジャーナリズムも明治期や大正期には元気のいい時代もありましたが、自国を解剖することに関してはどうでしたでしょうか。自国の政府を解剖したり、ジャーナリズムがジャーナリズム自身までを解剖する勇気があったかどうか。(223ページ)
龍田節「序説−コーポレート・ガバナンスと法」『コーポレート・ガバナンス−アメリカ法律協会「コーポレート・ガバナンスの原理:分析と勧告」の研究−』(日本証券経済研究所、1994年)
「少なくとも1970年代からアメリカの会社法文献や資料で盛んに用いられている」
「企業とくに大規模な公開会社が、どのような機構を備え、どのような基準に則って行動すれば、株主その他の関係者の利益を程よく調整し、社会の要請に応えることができるか」
青木昌彦「日本の企業統治構造は収斂するか」平木多賀人 編『日本の金融市場とコーポレート・ガバナンス』(中央経済社、1993年)
「企業の経営行動の選択を管理する基本構造、より限定していえば企業の基本政策を決める最高経営者を選抜する構造」
James N. Rosenau and Ernst-Otto Czempiel, eds., Governance without Government: Order and Change in World Politics, Cambridge University Press, 1992.
「政府なきガバナンス(governance without government)」
ジョン・バーロー(John P. Barlow)「サイバースペース独立宣言」公文俊平 編著『ネティズンの時代』(NTT出版、1996年)
「自然の働きの産物であって、われわれの集合的な行為を通じて自ずと成長するもの」
例)議会、取締役会、学級会
例)タウン・ミーティング、インターネットの各種組織
独裁者や政府高官など一部の人々にしか情報が共有されないタイプ。独裁体制、権威主義体制をとる国々に見られる。独占型情報国家では政府による情報収集は行われるものの、それが国民に対しフィードバックされることはなく、時に情報操作という形で誤ったフィードバックが行われる。また情報収集機能自体に問題がある場合もあり、政府すら正確な情報を把握できないこともある。意思決定・合意形成には一部のエリートだけが参画し、国民の大多数は関わることができない。対外的にも内部の情報を発信することは少なく、逆に外部のメディアによる情報収集に制限を設ける。
多くの民主主義国家が含まれ、最も一般的なタイプ。ガバメント型情報国家の多くは民主主義体制をとるために、選挙や情報メディアの報道を通じて国民と政府の間で情報のフィードバックが行われており、また一定の条件を満たさない情報については国民に公開されることが制度的・慣習的に求められる。政府が情報メディアを有することもあるが、民間の情報・報道メディアが発達しており、言論の多様性が保障されている。対外的にも情報操作は行われず、国際的な情報のフローは制限されない。
特殊な民主主義体制。意思決定・合意形成のための情報が広く流通しているため、多様なアクターが意思決定・合意形成に参加する。そこでの合意形成は必ずしも制度や手続きとして保障された形式にだけ従うものではない。つまり、政府内部での決定・合意が全てではなく、なるべく政府が関与しない形での自律的な決定・合意が奨励される。対外的にも対内的にも情報の自由な流通が行われ、情報の共有が積極的な価値として認められる。
映画『踊る大捜査線』 警視庁のキャリアと現場のノンキャリのぶつかりあい
参考:土屋大洋「情報通信分野における国家モデルに基づいた情報化政策に関する研究−ガバメントの限界とガバナンスの可能性−」(博士論文:慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科、1998年度)<http://www.glocom.ac.jp/Personnel/taiyo/dissertation.html>