頭脳国家
シンガポールは二回目なのだが、今回はシンガポール国立大学の先生と話をしなくてはいけないので、飛行機の中で予習。たまたま見つけた二冊が同じ先生によるものだと気づいた。たぶん第一人者なのだろう。
田村慶子『「頭脳国家」シンガポール』講談社現代新書、1993年。
田村慶子編著『シンガポールを知るための60章』明石書店、2001年。
どうしても言論統制やら治安維持法が気になってしまうのだが、それ以外でおもしろかったのは、リー・クアンユーら指導層があまり民族的ではないらしいという点。第一世代の指導者たちはイギリスで教育を受けた中国系なのだが、人種意識が強くなく、エリート意識のほうが圧倒的に強い。最終的には中国系しか首相にはなれないようなことが示唆されているが、それでも優秀かどうかを徹底的にふるいにかけて第二世代、第三世代を選んでいる。コネは通じない。リー・クアンユーの息子も誰もが認める優秀さがあるから昇進しているようだ。
問題は、第一世代と思想傾向を同じくするクローンしか次世代の指導者として選ばれないこと。反論するものはあっさり追い落とされるので、確かに「優秀」なんだが、異論は許されない雰囲気があるようだ。大学を卒業できる人は確実にエリートであり、エリートは指導層による盗聴もかいくぐりながらエリート再生産のスパイラルを上っていく。
それもこれも、資源がない都市国家としてのサバイバルという国家目標が定まっているからに他ならない。第一世代としては、今の繁栄が脆弱なものに過ぎないという危機感が強いのだろう。シンガポール国立大学の教授に今晩聞いてみよう。
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