1993年10月12日、医薬品会社・日本商事は(本社・大阪市)は「抗
ウィルス剤ユースビル(ソリブジン)とフリオウラシル系薬剤との併用による
重篤な血液障害について」と題する「緊急安全情報」(いわゆるドクターレター)
を出した。
その内容は、ユースビルとフリオウラシル系薬剤との併用で「白血球、血小
板減少等の重篤な血液障害等を発現した症例が7例報告されており、うち3例
は死亡に至っている」ので、併用は絶対しないこと、患者への問診を厳重に行
なうこと、併用薬の確認できない患者には投与しないことを求め、添付文書の
「使用上の注意」に「警告」をいれるなど、大幅に改定したというものであっ
た。
しかし、死亡例は3例に留まらないことがその後の調査で明らかになり、11
月24日、厚生省中央薬事審議会副作用調査会は「21人が副作用被害を受け、
うち14人が死亡」と報告した。このとき「因果関係が不明」だった1人の死
亡例は、12月24日に至り「15人の死亡例であった」と報告されている。
この間、製造・販売元の日本商事はユースビルを出荷停止・回収し、「誠心誠
意対応させていただく」との談話を出している。また、厚生省は11月24日
付で薬務局長通知を出し、添付文書の記載方法の変更(既承認の医薬品は2年
以内)を求めた。
ユースビルの販売停止・回収によって、マスコミの報道は12月から鎮静化し、
事件は落着したかのように見えた。
ところが、3カ月を経た1994年3月、マスコミは日本商事の社員らがソリ
ブジン薬害の公表直前に自社株を大量に「売り抜け」ていたと報じた。これは、
社内で重要な情報にいち早く接する者が、その立場を利用して株を売買して利
益を得るという、証券取引法で禁止されている「インサイダー取引」に相当す
る。実際、証券取引等監視委員会は、6月23日に日本商事を証券取引法違反
容疑で「強制捜査」した。
このような「他人の不幸により私腹を肥す」という、許し難い事実の発覚を契
機として、ソリブジン薬害事件は再び脚光を浴び、マスコミは取材合戦を展開
したのである。
以下に、その後報道された内容を問題別に分類してまとめてみる。