中央薬事審議会は今回のソリブジンの事件で、大きな問題を呈することとなっ
た。その構造については場所を変えて述べることにする。
いわゆる中央薬事審議会は、正委員が56人で専門委員は500人にものぼ
る。調査会は薬事別専門調査会(疑問点の審議)、特別部会(要点を絞って審
議する)、常任部会(新規性の高いものを中心に審議する)というようになっ
ている。先般、この委員のなかにメーカーの治験を請け負っている人がいると
いうことが問題になった。本来、メーカーの地験をしている人が委員になるこ
とは禁止されているのは事実が、現代の薬学の進歩のテンポは早くて、委員に
老大家を任命してもついていけないということがあって最先端が分かる人を任
命するようになる。ところが、そういう人はメーカーの方も目をつけていて治
験を依頼するということは現実には避け難いとされている。
そこで実際には、その委員がタッチしている薬の審査の際には席をはずしても
らうというルールにしているが、それも事実上は守られていないというのが現
状のようである。これは、その委員が自分の関与した薬品を強く推すというよ
うなことは考えられないが無言の圧力を感じる他の委員がいるかもしれないし、
この種の問題は倫理の問題である。
しかしながら、もっとも厄介な点は、この薬事審議会のシステムでは、インチ
キのデータを提出されてもお手上げだということである。医療の世界は、全て
の人は善良だという前提が成り立っている気配がある。「医師法」もそうであ
る。そうかといって、全てのメーカーを疑ってかかるというわけにもいかない。
やはり、思い切って、全ての臨床テストは国が実施するというアメリカのFDA
(食品医薬品庁)方式を取り入れる必要があるのではないか。いや、せめてお
かしいと委員が思った時には、国立の研究機関などを確保することができるよ
うにする必要はあろう。