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1994年現在、OECD25か国中、以下の12か国で情報公開法が制定されている。
スウェーデン(1766)、フィンランド(1951)、アメリカ(1966)、デンマーク(1970)、ノルウェー(1970)、フランス(1978)、オランダ(1978)、オーストラリア(1982)、カナダ(1982)、ニュージーランド(1982)、オーストリア(1987)、ベルギー(1994)。イギリス、ドイツなどでは情報公開法は制定されていない 。
前出の分類法により整理すれば、各国の情報公開法は次のような傾向を示す。
- 個人識別情報等
- アメリカ合衆国「人事、医療等に関するプライバシー侵害の恐れのあるもの」
- カナダ「個人の安全が害される情報」「プライバシー法第3条に規定する個人情報」「第三者の利益を損なう情報」
- フランス「プライバシー」
- オランダ「プライバシー」「関係ある自然人若しくは法人又は第三者に対する不公正な利益または不利益の防止」
- オーストラリア「個人のプライバシーに影響を与える文書」
- スウェ−デン「個人の私的、経済的状態の保護」
- フィンランド「個人的利害」
- ノルウェー「個人の私事に関する文書」
- デンマーク「私的個人の一身上または経済上の状況に関する情報」
- 企業秘密等法人不利益情報
- アメリカ合衆国「営業上の秘密」「金融機関にかかる検査等の記録」
- カナダ「第三者の利益を損なう情報」「貿易、金融、科学等における要保護利益を有する情報」
- フランス「商業上、工業上の秘密」
- オランダ「企業、生産工程に関する秘密」「関係ある自然人若しくは法人又は第三者に対する不公正な利益または不利益の防止」
- オーストラリア「ビジネス問題等に影響を与える文書」「会社および証券に関する立法から発生する一定の文書」
- フィンランド「企業の経営」
- ノルウェー「技術的発明、手順および生産、業務内容に関する文書」
- 国の安全、対外関係情報
- アメリカ合衆国「大統領行政命令によって秘密指定された国防外交に関するもの」
- カナダ「国防、国際関係を損なう恐れのある文書」「州政府、地方公共団体、外国政府、国際機関から入手した秘密情報」
- フランス「国防、外交の秘密」「通貨および公の信用、国家の安全、公共の安全」
- オランダ「国家の安全」「他国との関係」
- オーストラリア「国家安全保障、防衛、国際関係および州との関係に影響を与える文書」
- スウェ−デン「王国の安全、外交」
- フィンランド「国の安全、外交、国防」
- ノルウェー「国の安全、外交、国防に係る情報を含む文書」
- デンマーク「国家の安全領土の防衛および外国又は国際機関との関係」「外交、外国貿易」
- 犯罪捜査等公共の安全。秩序の維持関係情報
- アメリカ合衆国「捜査、調査記録で法執行の妨害となる恐れのあるもの等」
- カナダ「連邦警察等の捜査機関による法の執行、適法な捜査活動に基づく情報」
- フランス「租税および関税の違反に関する調査」「通貨および公の信用、国家の安全、公共の安全」
- オランダ「犯罪の捜査、訴追」
- オーストラリア「法執行および公共の安全の保護に影響を与える文書」
- スウェ−デン「犯罪の防止、訴追」
- フィンランド「犯罪の予防、訴追」
- ノルウェー「法律違反に関する報告」
- デンマーク「訴関係書簡」
- 事業執行に支障をきたす情報(意思形成過程情報を含む)
- アメリカ合衆国「内部のための規則、運用に関する事項」
- カナダ「大臣への説明資料等」「州政府、地方公共団体、外国政府、国際機関から入手した秘密情報」
- フランス「閣議および官庁の審議」[裁判所に継続中の進行および裁判手続きの予審の進行」
- オランダ「国の査察、規制、監督」
- オーストラリア「内閣の文書」「行政最高会議の文書」「内部事務文書」
- スウェーデン「検査、統制等の監督活動」
- フィンランド「公共的規制活動」
- ノルウェー「法律によって作成が義務付けられていない内部検討のための文書等」「閣議の議事録」「財政、給与、人事管理の適正な執行のための文書」「国の規制、取締措置の妨害となる文書」「公務員の任命、昇進に関する文書」
- デンマーク「閣議議事録、閣僚間会議記録」「立法、予算に関する各省間文書」「内部の作業用資料」「機関内部の書簡」「機関相互間の書簡」
- 法令・条例などにより、非公開とされている情報
- アメリカ合衆国「法令によって適用除外とされた事項」
- フランス「法律によって保護されている秘密」
- オーストラリア「法律の秘密条項が適用される文書」「法律家の免責特権に服する文書」
- フィンランド「法律によって秘密保持が定められた事項、文書」
- ノルウェー「法律により又は法律に基づく秘密扱いの文書」
- 国家特有のハイ・ポリティクス関連(特にマクロ経済問題)
- アメリカ合衆国「油井に関する地質的記録」
- フランス「通貨および公の信用、国家の安全、公共の安全」
- オランダ「国、法定機関の経済上、および財政上の利益」
- オーストラリア「連邦の財政上または財産上の利益に影響を与える文書」「国家経済に影響を与える文書」
- スウェーデン「国家財政、金融、通貨政策」「公の経済的利益」
- ノルウェー「国の予算」
- その他
- カナダ「連邦と州との関係を損う恐れのある文書」
- オランダ「王国の一体性を危険にさらすこと」
- オーストラリア「開示すれば議会侮辱または裁判所侮辱となる文書」
- スウェーデン「動植物の種の保存」
- ノルウェー「国家試験の問題、解答」
- デンマーク「公的統計の基礎資料」
各国の情報公開法について最も特徴的なのが、経済に関連した情報の不開示である。日本に於いていかなる情報公開法の議論にもみられないのが不思議なほど、諸外国は通貨政策の情報や国家経済、国際経済に影響を及ぼす情報の扱いに関して重大な関心を抱いている。しかし、これは逆にそれだけ日本の危機管理の認識に問題があるということなのであろうか。例えば中央銀行の協調介入などの情報は、協調介入をしたという事実が衆知となることでさえ、自体が協調介入の実効性を失わせるのである 。経済大国たる日本がこの問題に無関心でいていいはずはない。
しかしながら、それぞれの国で思わず失笑を誘うような規定も多々為されている。「連邦と州との関係を損う恐れのある文書 」「動植物の種の保存」等は、まだ切実な問題としても、「開示すれば議会侮辱または裁判所侮辱となる文書」に及んでは、そんなものを保有していること自体問題ではないのか、という疑念を持たざるを得ない。
Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997