映画ストーリー原案『REAL ILLUSION』
[Noise Creators, 1994年]



(NoiseCreaters のロゴ)
   ↓
(黒画面 or 昔の写真を映しながら 信也の声)

信也「大学に入ってから1年と半年が過ぎた………。
   いろいろなことが起こり、身の回りが大きく変わった。
   そして自分も………。
   ふと1年生を見て思った。みんな明るく、そしてキラキラしていた。
   それに比べて俺は………。

   そういえば最近いつ笑っただろう?心の底から…。
   なんだかいつのまにか冷めた人間になってしまった。
   感動……本や映画で涙することはある。
   ただ、日常のいろんな事に驚かなくなってしまったような気がする。
   これが大人になるということなのか………?

   時々、本当に自分が現実の中にいきているのかわからなくなることがある。
   俺はいったい、どこにいるのか………。
   何をすればいいのか………。………。」

(『REAL ILLUSION』タイトル がジュワッと出てくる。
 すごく低い声でささやくように、『REAL ILLUSION』という声も。
 ここら辺からフェードイン。)


【プロローグ】 そしていつもの朝……… 

信也の部屋はかなり散らかっていた。
外はいい天気だ。西向きのこの部屋には朝日は入ってこない。
9:27。ステレオコンポの時計が示していた。
信也はロフトの布団で眠っている。
毛布がぐちゃぐちゃなところを見ると、あまり寝ぞうはいい方じゃなさそうだ。
信也はスヤスヤと気持ちよさそうに熟睡している。
テーブルの上には、酒の瓶、缶、つまみの袋、そういった物が転がっていた。
クラッカーのカスや、悪趣味のバースデーカードも。
流しは、食器や空き缶で埋まっていた。
机の上は、本やプリントが山積みにされている。
その横に倒れかかった写真立てがあった。
入学当初の信也と徹があふれんばかりの笑顔で写っていた。

洗濯物もかなりたまっていて洗濯機の外にまであふれていた。
信也がロフトの布団の中で寝返りをうった。
掛け時計の針がピッと動いた。


次々とバスカードが機械を通り出てくる。
そしてバスから降りる足、足、足。

ジーパン、Tシャツ姿の藤井 玲子は、楽しそうに、男3人と歩いてくる。
結いた髪が風になびく。
玲子は元気に笑顔を見せていた。


信也はまた寝返りをうった。
少し布団がはがれてしまった。


朝のメディアセンター。
「インテンシブ」に急ぐ人々が横目に歩いていく。
まだ薄暗い感じのメディアセンターオープンエリア。
ブラインドから光が漏れている。
カタカタとキーボードの音。かなり早いキータッチだ。
ディスプレイにデータの嵐が吹き荒れた。
画面はカスタマイズされ、かなり改良されていた。
かなりコンピュータをやりこんでいる人のようだ。
長谷川 徹。そうウィンドウ内に名前が表示されている。
紀子「徹〜。聞いてるの?今週は遊びに行こうよ。ねえ………。」
徹の横には彼女の清水 紀子が話しかけているが、徹は聞いているのかいないのか、 曖昧なうなづきを繰り返すだけだった。


部屋のステレオの時計が13:17に変わった。
ユニットバスの鏡に信也の顔がのっそり現れた。
まだ半分寝ぼけた顔をしていて、髪は寝癖がついていた。
口の回りを、ぶっきらぼうに触った。
ヒゲはそれほど伸びてないなと思い、ヒゲは剃らない。
櫛で、髪の毛をとかすが寝癖は直らない。
整髪料は1週間前から切れたままだった。
何度か櫛を通すが、あきらめたのか、まあいいか、という感じの表情。


徹はコンピュータに向かって、難しい表情をした。
キーボードを叩いたあと、本を左手でめくった。

ディスプレイの上に顔がのぞき込む。
斜め前のコンピュータの席に座ってた、友達の山下だ。
山下「徹、IICの宿題やった? 3-2 が全然わかんないんだけどさぁ。」
徹「3-2? あぁ、あのポインタの問題? 」
山下「あぁ、あれ。」
徹「あれ簡単じゃねぇか。しっかりしろよ。」
山下「見せて!!」
徹「やだよ、自分でやれよ。   あのくらい自分でできるようにならないと後々困るぞ。」
山下「ケチケチすんなよ。いいじゃん。
   この前、経済システムの情報流してやったろ?」
徹「わかった、わかった。ちょっと待ってろ、今メールで送るから。」
徹はキーボードをカチャカチャ打ち始めた。
山下「さんきゅー。」
一度顔を引っ込めて、それからまた顔を出した。
山下「最近彼女とうまくいってるのか………?」

ちょうどその時、玲子が通りかかった。
玲子「あ、山下くん、元気ー?」
山下「おっす。なんか最近またがんばってるらしいね。」

徹がいることに気がついて、玲子は徹に話しかけた。
玲子「あ、徹、信也見なかった?」
徹「見てないよ。学校来てんのか? あいつ。」
玲子「ちょっと、ログインしてるか見てくれない?」
徹はキーボードを早速打っていた。
玲子はしばらくキョロキョロしていたが、腰をかがめて、徹の耳もとで 小声でしゃべった。
玲子「紀子と何かあったの? なんか最近元気ないよ、彼女。ちゃんと………。」
徹「ログインしてないよ、信也。おとといから入ってない。」
徹は玲子の話を割って、きっぱりと言った。
徹「まだ、寝てんじゃないの? あいつら昨日夜中まで飲んでたらしいから。」
玲子「ありがと、じゃあね。紀子の話も悩みちゃんと聞いてあげなさいよ。最近全然相手してないそうじゃない。」
徹「はいはい。今の仕事終わったら相手するから。プロジェクトの締め切り近いから忙しいんだよ、俺は。プログラムにわかんないエラーが出てさ………。」

その時、2人の横を玲子の友達が通った。
西川「おっす、玲子。」
玲子はニコッと笑う。
玲子「おはよう。」
友達は行ってしまった。
玲子「じゃあ、信也に会ったら探してたって言っといてね。」
玲子は急ぎ足で友達の方に去ってった。
玲子「キムー、アフレコ編集の部分やってくれた〜? ………。」

徹はまたディスプレイに向かってキーボードを叩きはじめた。


3限メディアシステム論の授業。Ω11の大教室は少し薄暗くざわついていた。
玲子と徹は後ろの方の真ん中に座っていた。
徹はコンピュータの本を読んでいる。
玲子はまじめにノートをとっていた。
玲子「信也遅いね。電話したらもう家出たみたいだったけど………。
   レポート提出知ってるのかなぁ。」
徹はダイナブックを開いて、電源を入れた。
徹「またラウンジでも行ってるじゃない。」
キーボードを打ちながら、ぶっきらぼうに答える。

IDカードが機械の中から出てきた。
信也は急いでそれをとる。
女の子「あ、ひさしぶり。」
そして男と女の子がメディアから出て行った。

プリンター室から慌てて出てきた男がいた。
男「よう!メディア論 とってたっけ? レポートやった?」
信也「あぁ、今から書く………。」
男「がんばれよ。」
男は走ってメディアを出て行った。
信也はゆっくりとカバンを置くと、ログインした。


Ω11、まだ退屈な話は続いていた。
男2人が通路を歩いてきた。玲子の友達だ。
小島「よう、玲子。」
玲子「おはよう。」
ニコッと笑う。
中田「山本先輩の件どーした?」
玲子「引き受けたよ。」
小島「マジで?おまえもよくやるなあ、さすがだよ。」
小島と中村は話しながら行ってしまった。
そして4つ前の席に座った。

その時、玲子の横を早足で通り過ぎた人がいた。
玲子「信也ー!」
小声で呼び止める。
気づい信也は戻って、玲子の横に座った。
信也「レポート提出まだ?」
玲子「授業終わったら、前の箱に入れるんだって。はい、今日のプリント。」
玲子は信也にプリントを渡す。
徹「また、ダブルスペース12ptだろ。」
信也「やらないよりマシだろ?」
カバンを机の下に置くが、ノートは出さない。
レポート提出のためだけに出席したのだから。

信也「おー! すげー! さすが、玲子。専門分野だけあるよ。難しくてわかんないや、俺には。」
信也は玲子のレポート見て驚いていた。

その頃、教室全体がざわついてきた。
教授「はい!なんかうるさくなってきたぞ。そろそろ話しをやめなさい。………。ほら、そこ、いつまでしゃべってる!」
全体が静かになった。
そして、教授はまた退屈な話を始めた。

玲子が信也に小声で話しかける。
玲子「今日信也のちで、誕生日パーティーやろ!」
信也「昨日もうやったよ。」
玲子「いいじゃん。今日は私がケーキ作ってあげるよ。徹も来るって。」
徹「仕事が今日中に終わればね。」
玲子「今日5限まであるんだっけ?」
信也「5限どーせ出ないよ。」
玲子「私、5限後ちょっとだけプロジェクトに顔ださなきゃいけないんだ。それ終わったら行くね………。」
信也「部屋片づけんの面倒くせぇなぁ。」

(↓ ここからボーカル付きのノリのいい音楽。)


(3人の普段の生活を象徴するようなシーンをフラッシュバック的に入れる。 3人のを交互に見せる。)

【信也】 ラウンジでコーヒーを飲みながら、ボーッとしている。
       〃  漫画雑誌を読んでいる。
       〃  友達と話しをしている。足は机の上、煙草を吸っている友達。)
       〃  机で寝てる。

【徹】  コンピュータ、一色。 
     数人でコンピュータを囲んで、何かを話している。
     コンピュータの前で本を読んでいる。
     プリントアウトとディスプレイを交互にみたりしている。

【玲子】 授業をまじめに受けている。
     編集機のところで、編集。
     プロジェクトのプレゼン準備(AVホール)。
     ミキサーや、スピーカーの配置決め。
     スケジュール表などを見ながら、職員を交渉。
 グループCで、ホワイトボードで説明。

(映像、音楽 フェードアウト)